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神経内科外来紹介

則行先生便り

第1回 「頭が痛い」あなたへ

 神経内科医に限らず我々医者はどんな時にでも、受診に来られた患者さんが持たれている症状や得られた検査結果から、治療や入院が必要な病気なのか、はたまた放っておいても大丈夫な病気なのか、ということを常に考えています。そしてそのことがわかれば、外来での医者の役目は半分以上終わっていると言ってもいいでしょう。

 さて、今回のテーマは「頭痛」です。ここ酒井病院の外来には頭痛に悩まれる多くの患者さんがいらっしゃっています。頭痛は日常的にありふれた症状ですが、命にかかわるものから放っておいても治るものまでさまざまあり、実にバラエティ-に富んでいます。それ故に頭痛の評価は難しく、医者泣かせの症状の一つであると私は思っています。

 この「頭痛」という名称は実は病名ではなく、なにかしらの病気や身体状況によって起こってくる「症状」です。ですから、持続する頭痛に対して単に痛みを治すだけでは原因を治したことにはならず、そのうちに必ず再発します。つまり頭痛の原因となっている根っこの部分をしっかり治療しなければならないわけです。

 さて、このテ-マだけでも1冊の本になってしまうほど奥の深い頭痛のことをお話するにあたって、それが緊急性のある、絶対に放っておいてはいけない病気から来るものか否かを見分けるためのポイントを簡単にお示しようと思います。

1)頭痛のおこり方  
 今、あなたが感じている頭痛は突然起こったものでしょうか、それとも以前からお持ちの症状でしょうか? 言うまでもなく、突然に起こった激しい頭痛の中には注意を要するものが多いのです。我々が一番気をつけるのが脳出血、つまり頭の中の血管が何かの原因(高血圧、頭部打撲など)によって破れて出血するもの。場合によっては緊急手術で頭蓋骨の中の血の固まりを除去しなければなりません。たいていの場合、頭痛以外の症状(例えば、意識がおかしかったり、手足がしびれたり、おう吐したり、など。)を伴います。

 以前私が主治医をさせていただいた脳出血の方は、頭痛の状況を「今まで経験したことのない激しい痛み」「ハンマ-で殴られたような痛み」と表現されていました。脳出血以外の病気では、高熱が出て、頭痛薬が効かないガンガンする頭痛を来たす髄膜炎や、緑内障という目から起こる頭痛も注意が必要です。

 私の経験上、突然の吐き気やおう吐を伴う激しい頭痛で受診された方の中には少なからず緑内障が見受けられました。この病気は眼球(目ん玉)の内圧が高くなることが原因であり、場合によっては失明することもあります。私の外来に来られた患者さんの中で、眼科受診をしていただいた方も結構いらっしゃいます。

2)頭痛の経過  
 今、あなたが感じている頭痛は起こり始めからどのような経過をたどっていますか? 気をつけたいのは次第に頭痛が強くなる時ですね。数時間でどんどんと悪くなるものには圧倒的に脳出血が多い。また、時間をかけて悪くなるものでは脳腫瘍も疑います。これらは随伴する症状も大切。吐き気はないですか? 手足がしびれたり、力が落ちていませんか?
 進行する頭痛の場合、頭部 CTスキャンは必須の検査です。もちろん酒井病院でも受けられます。

 このようにまとめてみると、命に関わる頭痛かどうかというのは、その起こり方と経過にあるようです。酒井病院での経験から言いますと、外来の診察室でよく遭遇する頭痛はほとんどが次の2つです。これらは共に頭蓋骨の外側に原因を持つもので、症状の強さにかかわらず命にかかわることはありません。

・筋緊張性頭痛
 ある統計によると、頭痛を訴えられる患者さんの半数がこの頭痛だそうです。これは、頭の表面、首、肩、背中の筋肉の持続する緊張が原因です。患者さんの症状としては、頭におもりがのっかっている(頭重感)、頭がはちまきでしめられるようだ、肩凝りがひどい、といったものがあります。

 頭ってそれと同じくらいの大きさのスイカの重さがあります。首や背中の筋肉は四六時中その重さを支えているわけですね。だから姿勢が悪いと起きやすい。(特にパソコンでの作業に注意。そういえば目の疲れもよく合併しています。度の合っていないメガネをかけても起こりますね。)寝る際に枕が高くても起きますよ。ご注意を。最近では精神的ストレスもよく原因になるようです。

 治療として私が外来で指導するのは次の2つ。
1つは生活指導。まず、目にやさしい生活を。人間だって元は野生の動物だから、遠くを見るために(外敵から身を守るため、獲物を捕まえるために)目はできているはずです。だから、なるべく仕事の合間に目を休めて遠くを眺めましょう。次に後ろ首、肩の筋肉の緊張をやわらげましょう。両指を組んで、背伸びをして下さい。グ-ッと背伸びしたまま数秒静止して下さい。そのときは腹式呼吸ですよ。おへそのちょっと下のところに吸い込んだ息をためる感じで。

 そういえば疲れた時によく背伸びをしますよね。我々がいちいち考えなくても、首や肩の筋肉の筋肉の緊張をほぐす方法を体が知っているのですね。だから無意識にやってしまうんです。日頃から先ほどの背伸び法をクセにしておけば、この頭痛はある程度まで予防・コントロールが出来ます。

 2つめにはシップ療法。(シップにかぶれやすければ塗り薬も可。)消炎鎮痛の外用薬をお風呂上がり、寝る前に首の真後ろに貼ること。はがれても構わないから、これをとにかく毎日続けて下さい。日中は必要ありません。夜、風呂上がりの寝る前に、調子が良くても悪くても必ず毎日シップを首の真後ろに貼って下さい。(冷シップの方が効果があるようです。)

 これを2週間から4週間も続ければ、頭はとてもすっきりするし、ほとんどの患者さんが長年の頭痛から解放されています。強調しておきたいのですが、姿勢はとても大切ですよ。私は外来で患者さんの左右の肩の高さを比較しています。このタイプの頭痛の患者さんの中には時たま左右の肩の高さの違う方を見かけます。筋肉の緊張のバランスが崩れているんですね。

・片頭痛
 頭痛の患者さんの約3割を占めている病気です。これは血管からくる頭痛で、心臓の鼓動に合わせてこめかみがガンガン、ズキズキとする痛み(拍動痛)が特徴です。発作性反復性にみられ、多くは左右のどちらか一方側に出現します。頭の表面を走る血管が拡がる(拡張する、と表現します。)ために起こり、ストレス、食事(ワイン、チーズ、チョコレート、ヨーグルト、レバー、ベーコンなど。)が時に誘因になるようです。その痛みは軽いことはあまりなく、患者さんは大変な苦痛を強いられますのできちんと治療を行わなくてはなりません。

 どの病気にも共通しますが、治療には2つの方法があります。
一つは対症療法。つまり症状を取り去る治療のこと。歯が痛い時には鎮痛剤、熱があれば解熱剤、といったような治療のことです。

 もう一つは原因療法。これはその症状を引き起こしている原因となっている病気そのものを治療することです。虫歯で歯が痛いのならば虫歯の治療、肺炎で熱が高いのであれば肺炎の治療を、ということですね。

 外来でいつも気になるのは、慢性の頭痛の患者さんのその大部分が対症療法、つまり痛み止めだけで長く過ごされていること。原因はそのまま放ったっきりですから、頭痛はいつまでも良くならずに長く薬を服用しているわけです。もちろんそれはそれで大切な治療ですが、原因療法はもっと重要です。自己判断に頼らず、よく担当の医者に相談されて的確な治療を行ってください。

 どうでしょうか? 頭痛について少しでもおわかりいただけましたでしょうか?
 それでは次回またお会いいたしましょう。お大事に。
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