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神経内科通信

2017年02月号 「健康寿命延伸のために」

 健康寿命については以前、この外来通信でお話しさせていただいたと記憶しています。復習しますと、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をいいます。一般的には平均寿命と健康寿命との間に、男性で約九年、女性で約十三年の開きがあるといわれており、健康寿命をいかに延ばすか、これが私たち医療従事者に与えられている課題といえます。
 
 先日、医学雑誌を読んでいて興味深い記事を見つけました。それは帝京大学臨床研究センターの寺本先生が書かれた文章だったのですが、先生は「健康寿命を縮める原因は主として脳卒中や心臓血管病の原因となる生活習慣病であり、血管(動脈)をいかに老化現象(動脈硬化)から守っていくのかが大きな課題となる」と主張なさっていました。そのポイントは「食事と運動」になります。
 
 日本動脈硬化学会は、動脈硬化の予防のために伝統的な日本食を推奨しています。従来の日本食は肉類、油脂類、乳製品がきわめて少なく、米類、豆類、魚類が非常に豊富であることが特徴でした。実際にその頃の日本では、血管が詰まる病気による死亡率が欧米諸国に比べると著しく低かったことが知られています。ところが、昭和五十年頃より外国型の食事
(肉類、油脂類、乳製品などの摂取)が一般化し、結果として生活習慣病の低年齢化が引き起こされています。同学会は塩分を減らした日本食が最高の食事であると結論付けています。
 
 次に運動についてです。適切な運動を習慣にすることによって生活習慣病を予防し、身体機能と認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。しかし、いきなり運動といわれても困りますね。平成二十七年に日本医師会の賛同を受けて発表された「血管病予防に関するリスク管理チャート2015」には、日常生活上の注意点として、「座ったままの生活にならないよう、活動的な生活を送るように」とあります。歩くことが当たり前の生活を心がけることが大切のようです。
 
 日本動脈硬化学会が提唱する生活習慣改善の7原則を示しておきます。
1.禁煙し、かつ受動喫煙(人が吸ったタバコの煙を吸うこと)を避ける。
2.過食をおさえて、標準体重を維持する。(痩せすぎない、太り過ぎない。)
3.従来の日本式の食事(特に魚類、大豆製品)を摂取する。(前述)
4.加えて野菜、果物、穀類(未精製)、海藻の摂取を増やすこと。
5.食塩を多く含む食品は控える。(減塩)
6.アルコールの過剰摂取は控える。(減酒)
7.有酸素運動(たとえば歩行、できれば少し早歩き)を一日三十分以上。
 医食同源。食事の内容はとても大切なのですね 
(文・神経内科 則行 英樹)
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