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神経内科通信

2009年03月号 「牛乳は優れた食品」

  食の安全性が疑問視されている昨今、栄養に対する関心も同時に年々高まってきているように感じます。そんな中、牛乳の価値が見直されつつあります。昨年、東京大学教授の清水先生が行なった牛乳の栄養についての講演は、実に興味深いものでした。今回はその内容を簡単にご紹介しましょう。
 
  まず、牛乳に含まれる栄養成分は非常に豊富であり、しかも牛乳は整腸作用を持っていて、栄養分の吸収効率がよいことが強調されました。これまでにも牛乳といえばカルシウム(骨をつくる成分)を補う食品としての認識はあったわけですが、それだけでなく良質なアミノ酸(タンパク質の構成成分)や各種ビタミン、ミネラルも含まれています。牛乳をコップ一杯飲むと、若い成人女性が一日に必要とするカルシウムの四割弱を補うことができ、また、日常的に牛乳を飲むことによって、最近問題になっている骨そしょう症の予防に有効であることがすでに証明されているそうです。また、カルシウムのみならず、各種ビタミンやアミノ酸も同時に補えることを考えますと、成人だけでなく成長期のお子さんにとっても優良な食品といえそうですね。
 
  時に牛乳がお腹に合わない方がいらっしゃいます。その場合、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロ鳴ったり、腹痛・下痢がおこるわけですが、清水先生によれば、一度に飲まずに少しずつゆっくり飲む、温めて飲む、できるだけ毎日飲む習慣をつける、ヨーグルトやチーズを食べることで対応してもよいとのことでした。ところが牛乳が体質に合わない(牛乳アレルギー)場合には、牛乳を飲むことにより腹痛・下痢といったお腹の症状に加えて、アトピー性皮膚炎、ぜんそく発作といった全身の症状が出ますので、当然これを避けなければいけません。しかし、小さい子供さんに見られる牛乳アレルギーはたいていの場合、年齢が上がるとともに治ってくるそうです。
 
  私は全然知らなかったのですが、牛乳乳製品健康科学会議という研究組織がありまして、牛乳に関する迷信をいくつか挙げています。以下に示します説には科学的な根拠が全くないとのことでした。
 
  1. 牛乳をたくさん飲んでいる人ほど骨そしょう症になりやすい。
  2. ヨーグルトの乳酸菌は胃の中で胃酸により殺されて効果がなくなる。
  3. 牛乳に含まれるカゼインという成分は胃の中で固まって消化が悪い。
  4. 最近、アトピー・花粉症が増えたのは、学校給食の牛乳のせいである。
  5. 超高温瞬間殺菌の牛乳は脂肪の酸化が進んでいて体に悪い。
 
  牛乳中に含まれる成分には、骨形成・カルシウムの吸収を高める、免疫増強作用を持つ、炎症を抑える作用がある、血圧・コレステロールの上昇を抑える、などがあります。清水先生は次のように話されました。「牛乳は完全な食品ではありません。しかし、きわめてすぐれた食品であり、賢く利用するべきことを多くの人に認識してもらう必要があります。」
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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