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神経内科通信

2009年12月号 「減煙ノススメ」

  先日、某新聞の読者投稿らんに面白い記事をみつけました。それは大分市に住む男性からのものでしたが、彼が検査目的である病院に入院していたところ、病院敷地外のすみでタバコを吸っている医者や職員を見かけたそうです。日頃は自分たちにタバコを吸うな、健康に悪いぞと説教しておきながら自分たちはなんだ、といった内容が書かれていました。僕は笑いましたねえ。
 
  10年ほど前に当時の厚生省が提唱した「タバコ消費量半減」宣言、平成21年の神奈川県議会での受動喫煙防止条例などにより、確かに全国的に禁煙推進運動は盛んになっています。ご存知のように、禁煙外来を設置する病院が増え、公共の建物や交通機関でも明らかに禁煙化は広がっていますね。このような世相を反映してか、最近では男性の喫煙率が四割を切ったという報告もありました。(ちなみに平成9年のデータでは約5割でした。)
 
  それではなぜ、これほどまでにタバコが嫌われるようになったのかを考えてみましょう。平成20年の世界保健機構の報告によれば、喫煙がもたらす病気として各種ガン(いん頭、食道、肺、胃、すい臓、大腸、ぼう胱など)、脳卒中、白内障、肺気腫などが挙げられています。病気になる前にしっかりと予防すること(予防医学)の重要性が叫ばれている今日、どうしてもタバコが悪者になってしまうのも仕方ないことでしょう。加えてタバコ依存症(ニコチン依存症)の増加も指摘されています。国立がんセンター研究所の望月先生によれば、タバコを吸う人の七割が依存症になっているそうで、驚いたことに、現在わが国では1900万人の方々がタバコ中毒と考えられているそうです。
 
  ここで禁煙治療の流れについて説明いたしましょう。病院の禁煙外来で健康保険による治療を行う場合、3ヶ月間に5回通院することになります。負担金は総額1万2000円から1万8000円程度。1日1箱のタバコを吸っている人ならば、タバコ代だけで3ヶ月で約3万円かかりますので、経済的にもお得ということがいえるでしょう。
 
  ここまでお話すると、あなたはきっと「タバコは絶対に悪いもので、必ずやめなきゃいかんもの」と思われることでしょう。でもですね、私はちょっと違う考え方をしています。何事も過ぎたるはなんとやらで、行き過ぎた喫煙は害なのだという考え方でいいような気がします。まずは1日1箱吸う人であれば2日で1箱に、1日10本吸う人であれば5本に減らすことが大事ではないでしょうか。(もちろん喫煙のマナーを守ることが最低条件ですが。)私は禁煙ではなく「減煙」をお勧めしたいと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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