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神経内科通信

2018年08月号 「かかりつけ医に相談を」

 
 

早いもので、私が当院で「もの忘れ外来」を始めてから約7年を経ようとしています。近年、マスコミによって認知症が取り上げられる機会が増え、また高齢者ドライバーの増加が社会問題として考えられるようになった背景があるためでしょうか、もの忘れの相談件数は毎年確実に増えております。

さて、冒頭ではもの忘れ外来の話から入りましたが、実は今回のテーマはもの忘れではなく、かかりつけ医に相談をですこれまでの経験から、もの忘れ外来を受診し相談をなさる方はたいていかかりつけ医をお持ちなのですが、そのかかりつけ医の先生にまったく相談なされずに私の外来にお越しになるケースが多くなっているように感じます。この受診方法はよろしくありません。  

その一つ目の理由です。一人の患者さんを複数の医師が診る場合、医師の間に連携がないと(すなわち、医療情報の共有がないと)病状の説明が違ったものになったり、内服薬の種類、数が異常に増えてしまったり、同じ種類の検査が続けて実施されてしまったり、といった不都合が生じることになります。特に検査データや症状の流れ、これまで服用してきた内服薬についての情報はトラブル防止のためにも、医師間で必ず共有しなくてはならないものなのです。

二つ目の理由です。認知症を呈する病気、これはアルツハイマー型認知症が非常に有名ですが、実は他にも七十種類ほどあるのです。その中には、薬による副作用によるもの忘れ、脳卒中に伴って起こってくるもの忘れ、うつ病を原因とするもの忘れなど実にさまざまあるのですが、時にかかりつけ医の先生が処方されている薬が原因となり、もの忘れが起こっている場合もあるのですね。そのようなケースでは、基本的にはかかりつけ医の先生が対処するべき問題となりまして、残念ながら私の外来ではどうすることもできません。

また、先に述べたことはもの忘れに限ったことではありません。新しい医師にかかろうとなさる場合、一応はかかりつけ医の先生に相談され、もし、受診の必要があるのであれば、事前に診療情報を相手の医師に送って、あらかじめ意見を求めるか、あるいは診療情報提供書(俗にいう紹介状)を持参していただき、新しい医師に前に述べたような内容を正確に伝えなければなりません。

くり返しますが、医師の間で医療情報を共有することは非常に大事です。さしあたり、かかりつけ医にはその医師の専門、非専門を問わず、どんなに小さなことでも積極的に相談なさってください。お困りの症状を、まずはかかりつけ医が把握すること、これはとても大事なことなのです。きっと最良の対処方法をアドバイスしてくださるものと思います。( 文・神経内科 則行英樹 )

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