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神経内科通信

2010年11月号 「外来で偶然みつけた意外な病気」

  早いもので、私が酒井病院に非常勤医師として勤めだして今年で9年目になります。金曜日のみの週一日勤務ではありますが、これまでに実に多くの方々の診療に当たらせていただきました。今回は当院の外来で偶然に発見した、意外な病気について2例ほど報告させていただきます。
 
  数年前のことです。原因不明のたんぱく尿を調べに私の外来を受診された初老期の男性がいました。通常、蛋白尿はじん臓病や高血圧、糖尿病などに合併することが多いのですが、この方の場合、原因に該当する病気が全くありませんでした。採血検査も正常でしたので、しばらく外来で様子をみようかと考えましたが、念のため診察でお腹に触れてみました。そうしますと、おへその周囲にドクンドクンと大きく拍動を触れるかたまりがありました。レントゲンで調べたところ、大きな腹部大動脈りゅう(血管のコブ)がみつかりました。この血管のコブが破裂したら大変です。急いで市民病院に紹介をして、すみやかに手術を受けていただくことになりました。動脈りゅうとたんぱく尿との関係については定かではありませんが、とにかく早期に発見できて幸いでした。
 
  次は50歳代の元気な女性です。もともと高血圧を指摘されていましたが、自覚症状がないために治療をせず放置していたそうです。ある日の朝、トイレの中で急に気分が悪くなり、私の外来を受診されました。頭痛やめまい、マヒ、しびれなどもなく、軽い吐き気のみでした。外来で血圧を測りますと、上の血圧が200以上で非常に高く、下の血圧も100以上と高値でした。呼吸音や心臓音も正常、全身状態も良好だったため、異常高血圧にともなう気分不良と考えました。外来のベッドで血圧降下剤を用いて様子をみようと思いましたが、その方が診察室を出る際に一言、「あれ、何だか今日は目がかすむな」。私は何かあると感じ、緊急に頭部CTスキャンを撮影しました。その結果、驚いたことにくも膜下出血が見つかったのです。これは死亡率が高く、また後遺症を残す可能性が高い、とてもこわい病気です。通常、くも膜下出血は突発的な激しい頭痛が特徴とされますが、この方にはありませんでした。やはり、からだの調子がいつもと違う、とはっきり自覚される場合には要注意ですね。内科では対応できない病気ですから、緊急に他院脳神経外科に紹介し、無事手術を終えて事なきを得たそうです。今、思い返しても冷汗が出そうになる経験でした。
 
  この9年間、当院でさまざまな貴重な経験をさせていただいています。これからも近隣の方々が安心して受診していただける外来を目指してまいります。からだの変化はお気軽に当外来でご相談ください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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