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神経内科通信

2015年04月号 「緑茶の効能」

  最近、患者さん方からよくサプリメントの質問を受けるようになりました。プロポリス、ニンジンエキス、カテキン、グランベリー、乳酸菌、ハーブなど、患者さんもよく勉強なさっており、知識が豊富で本当に感心させられます。
 
  今回は緑茶の効能について考えてみたいと思います。もう二十年以上も前のことになりますが、私が小児科の研修をしていた時、先輩医師と共に小学生までの子どもさんに一定期間、緑茶でのうがいを勧めてかぜ症候群のかかりやすさを研究したことがありました。その結果ですが、水だけでのうがいに比べて、緑茶のうがいはかぜの発病を抑えるのにより有効だとの結論に達しました。
 
  認知症や軽度認知障害(認知症の軽い症状はあるものの、日常生活にはまったく支障のない状態をいいます)に対する世間的な関心が高まる中、認知症の発病予防に緑茶が好影響を与えるのかどうか、金沢大学神経内科の山田先生の研究グループが石川県七尾市中島町での「なかじまプロジェクト」で六十歳以上の地域住民の方々に対して研究を行いました。その結果、驚くことに緑茶をまったく飲まない人たちと比べて、緑茶を週に1~6回飲む群では約5年後の認知機能低下の危険性が約半分に、緑茶を毎日1杯以上飲む群ではそれが約3分の1に減少した、との発表がなされました。一方、コーヒーや紅茶ではこのような認知機能低下予防効果との関連はみられなかったとのことです。またある研究では、糖尿病患者さんが緑茶を飲むことによって身体にどのように変化が起こるのかを調べており、1日2杯または4杯の緑茶を飲んだ患者さんとまったく緑茶を飲まない患者さんのグループとのデータを比較したそうです。その結果、1日4杯の緑茶は肥満率と血圧を低下させたとのことでした。
 
  緑茶の渋み成分は「カテキン」と呼ばれています。カテキンは以前から、コレステロールを下げる、抗菌作用がある、虫歯になりにくくする、体脂肪が気になる人に勧められる、などといろいろ言われてきています。実際にカテキンを主成分とした特定保健用食品がさまざま出ています。もう流行は終わりに近づきましたが、カテキンのインフルエンザ予防効果に関する研究は数多くなされておりまして、緑茶でうがいしても緑茶を飲んでも、そうでないグループに比べますと発病がより抑えられたという結果が示されたそうです。
 
  ただし、過ぎたるは何とやらで気をつけなければいけない点があります。緑茶はカフェイン飲料でもあります。ですから、健康に良いからといってあまりに過剰に飲み過ぎますと不安や不眠の原因にもなり得ます。楽しみながら適度に飲む緑茶であればよろしいかと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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