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神経内科通信

2016年09月号 「あなたの転びやすさ度は?」

 先日、病院内の廊下を歩いていて不意に右足をつっかけ、危うく前のめりに
コケそうになりました。日頃から患者さんには「コケちゃダメですよ」と口う
るさく指導している私がこのざまです。何とも情けないやら、恥ずかしいやら。
 転倒は非常にコワイと認識しておく必要があります。転倒によって打ち身(打
撲)はもちろんのこと、最悪の場合には骨折を来たすことがあります。また、
打ち所が悪いケース、特に脳にケガを負えば命に支障をきたすことさえありま
す。十年ほど前のちょっと古いデータではありますが、65歳以上の不慮の事故
による死亡者数の中で、転倒(および転落)は全体の約二割を占めていますし、
転倒(および骨折)は常に寝たきりとなる原因の上位に挙げられています。転
ぼうと思って転ぶ人はいません。やはり、日頃から自分はどれくらい転びやす
いのだろうか、と考え、自分自身が転倒予防に努めることが大切でしょう。
 転倒はこれまでに多くの学者によって研究されています。ここで転倒しやす
い要因について述べてみましょう。多くの論文に共通するものを挙げてみます。
 まず高齢であること(80歳以上であること)、女性、一年以内に転倒している、慢性めまいがある、視力が低下している、歩行状態が不安定、身体バランス機能が悪い、足の筋力が弱い、安定剤や血圧降下剤などを服用している、注意力
が落ちている、などがあります。当てはまるものがありますでしょうか。
 個人の努力で転倒を予防するためには、まずは右の要因を参考にして自分の
身体の弱点を知ることから始めなくてはいけません。そうそう、私は転倒予防
のポイントとして、「生活環境の整備」を強調しておきたいと思います。
 生活動線の床に物を散らかさない、布団やカーペットのへりに気をつける、
夜間は薄暗い中を移動しないこと、これらは意外に忘れられています。
 それではあなたの転びやすさ度をチェックしてみましょう。次の五項目で当
てはまるものがあれば□にチェック(☑)を入れ、点数をたしていって下さい。 
□ これまでの一年間に転んだことがある。(5点)
□ 背中が丸くなってきた。(2点)
□ 歩くスピードが遅くなってきたようにと思う。(2点)
□ 屋内・屋外にかかわらず、杖を使っている。(2点)
□ 毎日5種類以上の薬を飲んでいる。(2点)
 これは十年ほど前に杏林大学の鳥羽先生が発表された「簡易転倒スコア」と
いうものです。5項目の点数の合計が7点以上あれば、転倒にかなり注意が必
要な状態だそうです。いかがでしたでしょうか。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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