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神経内科通信

2009年06月号 「ロコモティブ・シンドローム」

  平成19年に厚生労働省が発表した国民生活基礎調査に目を通しますと、介護を要する状態を来たした病気(原因)についてくわしく知ることができます。第1位は脳卒中で、毎回の調査でその順位は変わりません。第2位は認知症で、第3位は高齢に伴う衰弱、第4位は関節の病気、第5位は転倒・骨折でした。
 
  私は自分の専門の立場から、寝たきり予防の重要性を多くの方々に呼びかけてまいりました。高齢で自然に体が動かなくなる場合は仕方がないと思いますが、脳卒中と転倒・骨折に関しては努力と注意により必ず予防できます。何としてでも寝たきり患者さんの数を減らしていきたいと考えております。
 
  脳卒中の予防については、これまでも何度か述べてきました。肥満、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症(以上、メタボリック・シンドローム)、不整脈などには十分注意し、もし異常があれば必ず病院を受診して、生活習慣(食事・喫煙・飲酒など)の改善とともにしっかり治療することが大切です。それでは転倒・骨折予防には何が大切なのでしょうか。簡単にお話いたします。
 
  あなたは「運動器不安定症」をご存知でしょうか。運動器不安定症はこの数年で有名になった用語なのですが、これは何らかの原因により骨・関節・筋肉・神経などがその機能・能力を低下させてしまい、その結果として非常に転びやすくなったり、痛みが強くなったりして体が思うように動かなくなってしまう病態です。当然ながら、その行き着く先は寝たきり状態になります。
 
  では、自分が運動器不安定症になりかけているのかどうか、どのようにすれば判断できるのでしょうか。平成19年に日本整形外科学会は運動器不安定症になりかけている状況を「ロコモティブ・シンドローム」と呼ぼうと提唱しています。これにより多くの人々が、もっと運動器についての関心を高めてくれればという狙いがあるようです。ロコモティブ・シンドロームには5つの簡単な自己チェックの項目があり、その1つにでも当てはまれば運動器不安定症の始まりというわけです。あなたもチェックしてみてください。
 
  1. 片足立ちで靴下がはけない。
  2. 家の中でつまずいたり、滑ったりする。
  3. 階段を上るのに手すりが必要である。
  4. 横断歩道を青信号で渡りきれない。
  5. 15分くらい続けて歩けない。
 
  いかがでしょうか。もし1つでも当てはまる項目があれば、今後は転ばないような工夫と注意を要します。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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