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神経内科通信

2009年08月号 「アルコール依存症」

  地球温暖化の影響でしょうか、それとも年をとって暑さに弱い体になってしまったせいでしょうか、私はこのところ夏が大変苦手になってしまいました。こうなりますと仕事帰りにビアガーデンに行き、キューっと冷たいビールでも飲みたくなってしまいます。ある本に面白いことが書いてありまして、日本人を含めた黄色人種は本来、半分くらいはお酒が飲めない体質なんだそうです。それなのに飲酒量でみますと日本人は世界で第28位、国民一人当たり毎日ビール350㏄を飲んでいる計算になるそうです。これは驚きですね。適度なお付き合いを心がければおいしく楽しいお酒ですが、慢性的に度を過ぎればさまざまな大きな問題が起こります。これがアルコール依存症です。
 
アルコール依存症には診断の根拠となる基準がありまして、
 
  1. 強いお酒の欲求、あるいはお酒を飲まなきゃどうにもならないという強迫観念がある。つまりお酒がないと生きて行けないような感覚を持つ状態。
  2. お酒を少しでやめることができない、つまり飲酒量をコントロールできない状態にある。
  3. お酒が切れたときに、不眠や不安感、手のふるえ、発汗などの症状(離脱症状)が出てきてしまう。
  4. 今までは1合で酔っ払っていたのに、それが酔うのに3合、5合と量が増えていく。(これを耐性の増大といいます。)
  5. お酒が生活の中心になってしまって、他に楽しみや生きがいがなくなってしまう状況にある。
  6. 自分自身で精神的・肉体的問題があることがわかっていながら、お酒を控えたり、やめたりすることができない。
 
  これらの6項目が1年間のある時期に3つ以上みられたときにアルコール依存症と診断します。今まではお酒は肝臓によくないことばかりが強調されてきましたが、お酒の害は肝臓だけにとどまりません。ビタミン不足からくる神経障害を引き起こし、手足の感覚がおかしくなりマヒを起こすことさえあります。さらに認知症のような症状や小脳症状(慢性的なふらつきやろれつ障害など)も起こりえます。結果として職を失ったり、他人に対して暴力的になったり、人格が崩壊するケースもあり、本症は社会的にも深刻な大問題です。
 
  治療法はもちろん断酒です。そのためには定期的に外来(精神神経科がメインです)に通院すること、お薬によってお酒が飲めない体にすること、断酒会に参加することが一般的に勧められています。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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