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神経内科通信

2017年12月号 「高齢者に多い「足の付け根骨折」

 

先だって大分合同新聞に興味深い記事を見つけました。今年十月十五日の朝刊の記事なのですが、見出しは「骨折発生率は西高東低」とあります。 

ある研究グループが四十歳以上の「足の付け根骨折(大たい骨の近位部骨折)」の発生率を都道府県別に調べてみたところ、東日本に少なく、西日本に多いという傾向がはっきり数字となって出たそうです。女性に関していえば、大分県は九州の中でも発生率がもっとも高く、第一位となっています。全国的にみますと、第1位は兵庫県で、全国平均を100として120。続く第2位は和歌山県と沖縄県で118。そして第3位は奈良県と大分県で116でした。ちなみに大分県の男性は98で、ほぼ全国平均の数値です。男性のトップは沖縄県で144という高い数字でした。(なお、男女とも数字が低い県はというと、秋田県が男性63、女性65。青森県が男性65、女性68となっていました。)この足の付け根骨折にみられる西高東低現象の理由ですが、その原因は明らかではないらしく、おそらくは食生活が影響しているものと推測される、と新聞記事にはありました。

この足の付け根骨折の主な原因はご存知の通り、年齢を重ねるとともに骨が弱くなる「骨粗しょう症」という現象です。厚生労働省の発表では現在、わが国には約1,280万人の骨粗しょう症の患者さんがいるそうです。(その内訳は男性が約300万人、女性が約980万人とされています。)驚いたのは、そのうち適切に治療を受けているとされる患者さんの総数が約15%となっていることです。 

これも厚労省が発表したデータなのですが、「平成二十五年国民生活基礎調査」によりますと、日本人が要支援・要介護状態となる主な原因として、一位が脳卒中で18.5%、二位が認知症で15.8%、三位が高齢に伴う衰弱で13.4%、四位が転倒・骨折で11.8%となっています。高齢化社会を生きる私たちにとって、寝たきり状態を予防するため、そして自分の身の回りのことが自分でできる期間、すなわち健康寿命を延伸するためにも、脳卒中や認知症とともに骨粗しょう症に対する理解が必要なのかもしれません。

高齢女性はホルモンの関係で同じ年齢の男性に比べて骨が弱くなりやすく、当然ながら男性よりも骨折の危険性が増します。他にも糖尿病の患者さんは糖尿病のない方に比べて、足の付け根骨折が1.7倍多く、慢性腎不全のケースでは2.32倍も骨折の危険性が増すとの報告もあります。年齢以外の要素にも注意が必要だということになります。

多くの方がご自分の「骨年齢」に関心をもっていただけるよう、私の外来でも啓発を進めてまいりたいと考えております。( 文・神経内科 則行 英樹 )

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