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神経内科通信

2010年05月号 「慢性頭痛の意外な原因(その1)」

  ある統計によりますと、長期にわたり持続する頭痛(慢性頭痛)に悩まされている日本人の数は約3000万人、なんと国民の4人に1人なのだそうです。
 
  私は頭痛の治療も専門にしており、これまで数多くの患者さんの治療を行いました。慢性頭痛の代表的な原因として、緊張型頭痛(主に筋肉由来の痛み)と片頭痛の2つが有名ですが、まれではありますが、時に慢性頭痛の意外な原因に遭遇することがあります。そのことについてお話したいと思います。
 
  過去に私が診察した中年男性のケースですが、数年来、2日に1度くらいのペースで朝、起きがけに頭全体の何ともいえない圧迫感(締めつけ感)が出現したそうです。どこの病院に行っても検査結果に異常はなく、原因不明と言われたとのことでした。ちなみに、市販の鎮痛薬は効果がなかったそうです。
 
  体格がよく(というよりも肥満体型で)日中に眠気をもよおすことがあり、かつ、明け方に強い頭痛であることから、私は睡眠障害を疑いました。ご本人から詳しく話を聞きますと、奥さんからいびきが大きいことを以前より言われていたことがわかりました。(習慣性いびき)睡眠障害を専門にする病院に紹介状を作り、検査をしてもらったところ「睡眠時無呼吸症候群」と診断され、治療を行うと同時に日中の眠気と頭痛は消失したとのことです。
 
  睡眠時無呼吸症候群についてはぜひとも知っておいてください。寝ている間、1時間のあいだに10秒以上呼吸が止まったり、呼吸が弱くなる状態が5回を超えるものをいいます。特に30回以上を重症に分類します。
 
  原因はさまざまですが、あごの周りにたくさんの脂肪がつく肥満体型の方に多いとされます。しかし、へんとう腺の大きい方、あごが小さい方や舌の大きい方などにも起きやすく、必ずしも肥満の方だけに起こるわけではありません。
 
  夜間の無呼吸にともない、実にさまざまな症状が出現します。明け方の頭痛はその中の一つに過ぎません。そもそも、この病気が社会的に有名(社会問題)になった発端は、平成15年に山陽新幹線の運転士さんが起こした電車の居眠り運転でした。日中の眠気、集中力・記憶力の低下が特に有名ですが、夜に目覚めやすい、夜にひんぱんにオシッコに行きたくなる、などの症状もあります。また、この病気を放置しておくと生活習慣病(高血圧、糖尿病、心臓病、脳卒中など)を引き起こしやすくなることがわかっていまして、専門の医師による早急な生活指導・治療が必要です。
 
  あなたやあなたのご家族に思い当たる方がいらっしゃれば、当外来にてお気軽にご相談ください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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