本文へ移動

神経内科通信

2011年12月号 「肥満と食事について(その5)」

  数回にわたって日本体育大学大学院の大野教授が行った講演会の内容をご紹介していますが、今回は運動療法の原則についてお話します。
 
  食事療法が守れた上で、次は運動用法を併用します。大野先生によれば、運動は「いつでも、どこでも、ひとりでも」できることが肝要で、平成18年に厚生労働省から発表された「健康づくりの運動指針」が参考になるとのことでした。少々私がアレンジしますが、次の身体活動の項目をご参照ください。
  【生活活動】歩行20分が1点、自転車こぎ15分が1点、階段の昇り降り10分が1点、重い荷物の持ち運び7~8分が1点
  【運動】軽い筋力トレーニングやバレーボール20分が1点、早歩きやゴルフ15分が1点、軽いジョギングやエアロビクス10分が1点、ランニングや水泳7~8分が1点
 
  例えば、1週間に20分の歩行を5回行えば点数は5点。同じく1週間に早歩き30分を5回行えば10点。(15分が1点ですから30分で2点、それを5回しているので2×5=10点となります。)1週間に40分の歩行が3回、軽いジョギング20分が2回ですと10点になります。(20分の歩行が1点ですから40分の歩行で2点、それを3回で2×3=6点。10分の軽いジョギングが1点なので20分で2点、それを2回すれば倍の4点。6点+4点で10点。)
 
  前述の運動指針によれば、生活習慣病予防に必要な身体活動量として、1週間に【生活活動】と【運動】の点数を合わせて23点以上の活動を行い、そのうち4点以上の【運動】が目標に掲げられています。なお、内臓脂肪を減らすためには【運動】の項目だけで10点以上の活動が効果的とされています。
 
  大野先生は減量には三つの段階があると主張されました。減量を思い立って食事量を減らすと、最初は体内の余分な水分が減るので体重は急激に減るのが普通です。これが減量の第一段階。やがて同じ食事量でも体重がほとんど減らない停滞期を迎え、これが第二段階。この時期には少ないカロリーにより身体に省エネのスイッチが入り、エネルギーを温存してしまいます。ここで挫折して体重のリバウンド(逆戻り)を起こす人が多くいるわけですね。この時期にこそ運動療法が重要です。停滞期を乗り越えて再び体重が減り始めたら、第三段階になります。この時期には肥満につながった日常の行動や習慣を見直して、理想体重が維持できるようにきちんと指導しなければいけません。減量のペースは月に1~2キロで十分ですが、筋肉や骨が弱っていないかどうかの医学的確認が必要となります。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
TOPへ戻る