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神経内科通信

2012年10月号 「慢性疲労症候群」

  慢性疲労症候群をご存じでしょうか。この病気はそれまで普通に家庭生活、社会生活が送れていた人が、突然激しい全身倦怠感を自覚し、その後もひどい疲労感が抜けきれず、頭痛や発熱、筋肉痛といった身体症状と思考力の低下、うつ気分といった精神神経症状が長く続くやっかいな病気です。1988年に米国疾病対策センターにより報告が行われて以降、世界中の国々においてこの病気の報告がなされ、現在もなお、各国で原因や治療法の研究が行われています。
 
  この病気の難しいところは、診断に行きつくまでに除外すべき病気が非常に多く、種類も多岐にわたるということにあります。肺、肝臓、心臓などの障害、肝炎やエイズなどの慢性感染症、こうげん病、筋肉の病気を含めた神経疾患、ホルモンのバランス異常、睡眠時無呼吸症候群に代表される睡眠障害、うつ病などの精神疾患、薬の副作用などをまず除外します。ていねいな問診、採血やレントゲン検査などを実施し、以上の病気ではないことを確認します。
 
  次の段階として、以下の項目を満たしているかどうかしっかりと確認します。
 
  •  この全身倦怠感は新しく発症したものであり、急激に始まったものである。
  •  十分な休養をとっても、まったく回復しない。
  •  現在行っている仕事や生活習慣が原因ではないことが明らかである。
  • 日常の生活活動が、発症前に比べて半分以下となっている。あるいは疲労感 のため、月に数日は社会生活や仕事が出来ず休んでしまっている。
 
     さらに次の症状10項目のうち、5項目以上を認めることを確認します。
 
  1.  からだを動かした後の疲労感が長く続く。(休んでも一日以上それが続く)
  2. 筋肉痛
  3. 多発する関節痛。ただし痛いところが赤くなっていたり、腫れてはいない。
  4.  頭痛(痛みかたに特に特徴はない)
  5.  のどの痛み
  6.  睡眠障害(不眠のみならず過眠も含む)
  7.  思考力・集中力の低下
  8. 微熱
  9. 頚部リンパ節の腫れ(明らかに病的な腫れと考えられる場合のみ)
  10.  筋力の低下
 
  とにかく診断するまでが大変なのです。(私も目下、勉強中です。)最近では「全身倦怠感」に関する研究が非常に進んでいて、日本疲労学会という「だるさ」の専門家の集まりの会が設立されたそうです。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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