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神経内科通信

2012年11月号 「インフルエンザの予防法」

  今年もまたインフルエンザ流行の季節がやってまいりました。みなさま、予防対策は万全でしょうか。今回はインフルエンザの予防法をまとめます。
 
  流行期をむかえる前にインフルエンザの予防接種を受ける方は、以前より増しているように思います。実際に、インフルエンザにかかって外来に来られる方のほとんどが予防接種を受けていません。では予防接種を受けておくこと以外に、どのような予防方法があるでしょうか。予防の最大のポイントは何はさておき、ウイルスの感染経路を遮断することにあります。ですから、インフルエンザの流行期にあえて人混みを避けることは非常に大きな意味があります。また、ウイルスはせっけんの成分でも破壊されることが知られており、外出から帰ったら、せっけんをしっかり使って水で洗い流す手洗いも有効です。もちろん、うがいもお勧めできます。(塩水がよいという研究報告があります。)また、室温や湿度を適度に保つことで、のどや気管の粘膜を強くできます。
 
  インフルエンザの感染経路としては、咳やくしゃみで飛び散るだ液の小さな粒子(飛沫:ひまつ)を吸い込んでおこる飛沫感染と、ウイルスがついた指で自分の口や鼻に触れて感染する接触感染の2つが有名です。毎年、患者さんからマスクをつける意義を質問されますが、マスクについては、感染を予防するということではなく、インフルエンザにかかった方が、周囲にウイルスをまき散らさないようにすることに意味があるとされています。すなわち、エチケットとしてのマスク着用です。通常のマスクでは、ウイルスから口や鼻を完全には防御できないことがわかっています。実は感染予防のためのマスクもあることはあるのですが、このようなマスクの線維の目は非常に細かくて通気が悪く、長くつけていると息苦しささえを感じてくるため(私も経験しました)、このタイプはあまりお勧めできません。(なお、値段的にも高価です。)
 
  ただし、接触感染の予防には通常のマスクも役に立ちそうです。アメリカで行われた研究で、私たちは日常的に、無意識に指で鼻や口を触る習慣があることが証明されています。ですから、ウイルスのついた指から鼻や口を守るという点では決してマスクも無意味ではないことになりますね。
 
  まとめましょう。流行期には不必要な外出を避ける。患者さんとの濃厚な接触は避ける。せっけんを用いての手洗いと(塩水での)うがいは常識。適度の室温、湿度を保つ。マスクはエチケットとして、あるは接触感染予防に用いる。以上のようになるでしょう。もちろん、平素から体力(抵抗力)をしっかりつけるべく、準備しておくことも大切です。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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