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神経内科通信

2013年03月号 「脳卒中を予防するために(その2)」

  先月号に引き続きまして、日本脳卒中協会が発表した「脳卒中予防十か条」の解説を進めてまいります。
 
2.糖尿病 放っておいたら 悔い残る
  生活習慣病として高血圧と双璧をなすものが糖尿病です。平成19年に実施された国民健康・栄養調査によりますと、わが国で糖尿病が強く疑われる人は約890万人、糖尿病の可能性を否定できない人は1,320万人とされ、双方を合わせますと約2,210万人にのぼると推計されています。平成9年の同調査では約1,370万人、平成14年では1,620万人とありますので、約10年間で糖尿病が疑われる人が1,000万人近く増加したことになります。
 
  ここで糖尿病について復習いたしましょう。糖尿病とは、糖質(血糖)を調節するインスリン(すい臓から分泌されます)というホルモンが不足したり、その効き目が不十分なために常に血糖値が高い状態になっている状態をいいます。それでは血糖が慢性的に高いとなぜ身体に悪いのでしょうか。
 
(1)三大合併症を引き起こします。 糖尿病の三大合併症、それは神経障害、網膜(もうまく)症、腎(じん)症です。神経障害は手足のしびれ、感覚のにぶりが主な症状です。そのためにケガをしても気がつかなかったり、コタツや湯たんぽで大やけどをすることがあります。また、下痢や便秘、排尿障害も有名です。網膜とは目の奥にある光の強さや色を感じる場所ですが、この網膜にある毛細血管が破れて出血します。(網膜症) 出血の程度によっては失明することも。腎症は腎臓の動脈に障害が起こり、その機能が低下、最終的には腎不全のために人工透析が必要になります。
 
(2)動脈硬化の原因となります。 高い血糖値が持続しますと、じわじわと血管(動脈)がむしばまれていきます。すなわち、動脈硬化が異常に早く進行します。血管がボロボロになる怖さについては高血圧のところで述べた通りです。動脈硬化は脳卒中、心筋こうそくをはじめ、動脈がつまってしまう病気の原因となり、いったん進行すれば回復はまず不可能です。 高血圧と同様、基本的に糖尿病の初期には自覚症状がありません。よって健診で高い血糖値を指摘されても、速やかに病院を受診される方は残念ながら少ないのではと考えられます。血糖を適切に調整しさえしていれば脳卒中にかからずに済んだのでは、と思われる方々を私は知っています。多くの方々がご自分の血糖値に関心を持っていただきたいものです。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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