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神経内科通信

2013年10月号 「骨粗しょう症と骨折」

  現在、我が国の寝たきり原因の第4位が「転倒・骨折(約9.3%)」となっており、私たちにとって骨折予防は脳卒中予防と同様、重要なテーマといえそうです。今回は骨粗しょう症と骨折との関係について述べてみようと思います。
 
  ある統計によれば、現在、骨粗しょう症の患者さんは約1,300万人いると推定され、その総数は年々増加傾向にあるそうです。骨がもろくなれば当然、骨折が起こりやすくなるわけですが、その代表的な部位は大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)、椎体(背骨)、前腕骨(手の付け根の骨)の3か所です。特に大腿骨の骨折については寝たきり状態となる大きな危険性をはらんでおりまして注意が必要です。さらに、大腿骨骨折後の5年生存率が早期乳がん、早期前立腺がんに比べても悪いという報告も聞かれ、これは大変深刻な問題です。
 
  年齢を重ねて骨が弱くなるということ自体は正常な現象(老化現象)であり、確かに仕方がない部分はあります。しかし、それが骨折につながり、ましてや不幸にして寝たきり状態に至ってしまうとなれば、高齢者の骨折予防について考えることには大きな意味があると私は思います。なぜ、年配の方々の骨折が減らないのか、というテーマについては様々な方面で研究が進んでおりまして、ある研究では、骨粗しょう症が原因で骨折した方の2割弱しか骨粗しょう症の治療が行えていない、すなわち治療不足が大きな原因であるとの結論を出していました。実際に、骨粗しょう症治療に積極的な西欧では、女性の骨折が年々減少しています。骨粗しょう症が原因で骨折を経験した場合や、ご家族に骨粗しょう症による骨折がみられた場合には早めに検査を行い、治療を受ける必要があるのかもしれません。現在、骨折を一度経験すると、時間をおいて再び骨折を繰り返すという「骨折の連鎖」が問題視されています。背骨の2カ所以上に骨折がある方は、そうでない方に比べて6倍以上、再骨折の危険性が高くなる、という研究報告もありました。
 
  最近、中津市で行われた研究会に参加して面白い話を耳にしました。女性は閉経後、明らかに骨粗しょう症が進むわけですが、50代から70代までの骨折の原因は骨粗しょう症の要因がメインらしいのですが、80代以降は骨粗しょう症というよりも、体のバランスの悪さが主な要因となるらしいのです。そして、片足立ちの訓練によって骨折が予防できる可能性が示唆されていました。年配であるほど足腰の力、そしてバランス能力を保つことが大切なのですね。
 
  従来の治療は飲み薬が主流でしたが、最近では注射薬も使用されるようになりました。治療方法は進化しているようです。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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