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神経内科通信

2015年05月号 「まぶたのピクツキ」

  最近パソコンを使う業務が増えており、乾き目と疲れ目がひどくなりました。もともと視力の悪い私は、集中的に目を使う作業が実に身体にこたえます。
 
  このところ長時間パソコン作業を行いますと、必ずといってよいほど両目のまぶたのピクツキがおきるようになりました。私の場合、作業をしばらく中断したり、疲れ目の目薬を使ったり、目を冷やしたりしますと自然に収まるのですが、このピクツキを心配されて来院される方も多くいらっしゃいますので、今回はまぶたのピクツキ(眼瞼痙攣:がんけんけいれん)がテーマです。
 
  まぶたのピクツキの原因は数多くありまして、目の疲れ、精神的なストレス、乾き目、脳の炎症、脳しゅようなど、実にさまざまです。私が診察させていただく中ではほとんどの方が目の疲れ、目の乾きを原因とするピクツキで、生活指導、目薬の処方で比較的簡単に軽減ないし消失します。ですから、まずは目に負担の少ない生活を指導させていただき、目薬による治療を行います。
 
  ところが、以上の治療が無効で時間の経過と共に悪化するピクツキもあります。しかも、脳の検査をしても異常が見つかりません。東邦大学の藤岡先生によりますと、治りにくいピクツキで片側のまぶたに起こるもののほとんどが、顔面神経という神経がまぶたの筋肉に到達する途中で血管により圧迫されていることが原因だと述べられています。なるほど、これでは目薬をしても、目に優しい生活を送っても良くはなりませんし、脳の検査でも異常がでません。
 
  それではやっかいなピクツキの特徴をお教えしたいと思います。まずはいつも同じ側のまぶたに症状が起こることがポイントで、ほとんどのケースで下まぶたにおこります。最初の頃はまぶたのピクツキが気にならない程度に出ては消え、出ては消えをくり返しますが、やがてピクツキのひどい日と軽い日が明らかとなり、症状の程度に波が生じてきます。途中、一年から二年、ピクツキがすっかり消えてしまうこともあるようですが再発しまして、数年のうちに一日の中でも連続的に長時間、まぶたのピクピクが生じるまでに進行することがあります。こうなりますと薬の効果はほとんど期待できません。
 
  一昔前まではケイレンを止める内服薬がよく処方されていましたが、無効に終わることが多かったため、最近では「ボツリヌス毒素療法」「手術療法」が選択されます。ボツリヌス毒素とはボツリヌスという細菌が作る猛毒で、この毒を薄めた注射液をまぶたに打つことで筋肉のケイレンを止めます。しかし、これは根治を期待する治療方法ではないため、やはり最終的には手術によって神経の圧迫をとるということになります。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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