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神経内科通信

2015年06月号 「不眠症との向きあい方」

  東京慈恵医科大学の小曽根先生によりますと、不眠症の引き金は大きく四つあるそうです。
①不安・悩み・緊張といった心の問題と、痛み・かゆみ・呼吸器の病気などの身体の問題。
②「睡眠時間は最低8時間必要」という誤解、思い込み。実際には個人差が大きく、それほど時間にこだわる必要はない。また、年齢と共に必要な睡眠時間は少なくなる傾向にある。
③生活リズムの乱れ。特に夜型の生活。強い光を浴びると目が冴えてしまい、寝付きにくくなる。
④飲酒・喫煙習慣。寝る前の飲酒は眠りを浅くする可能性あり。コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、タバコに含まれるニコチンは不眠の原因になりえる。
 
  さて、夜眠れない、と病院に相談に来られる方のお話をよく聞きますと、およそ次の二つの不眠のパターンに分けられそうです。一つには「すぐ眠れない」「寝つきが悪い」という入眠障害。もう一つには「夜中に目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」という睡眠維持障害。いずれの場合にせよ、気持ちのよい朝を迎えることができません。私はそれらのパターンに応じて異なる種類の睡眠薬を処方していますが、果たして不眠は薬だけで解決するものでしょうか。
 
  私の外来では生活習慣病の方に、「決してお薬を飲むことだけが最善の治療法というわけではありません。日頃からお薬の効きやすい身体をご自分の努力でしっかりと作ってください」と指導させていただいております。この考え方は不眠症の治療にも当てはまる気がします。もちろん、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚(あし)症候群、うつ病といった心身の病気につきましては、治療のアドバイスを積極的に行いますが、夜に気持ちよく眠れるように生活習慣を改善していただくことはお薬を服用することと同じくらいに大切です。
 
  冒頭に記しました不眠の4つの原因を参考にしてみてください。まず第一に、不眠を引き起こす心身の病気があればそれを優先的に治療する、寝る前にパソコンや携帯電話の強い光を浴びないようにする、アルコール・カフェイン・ニコチンに気をつける、規則正しい生活、例えば朝に体内時計はリセットされるので、同じ時間に起床する習慣を身につける、などが考えられます。
他にも不眠に対する恐怖心を克服する方法として次のようなものがあります。眠気がおきてから布団にもぐる(すなわち布団の中で眠気を待たない)、午後3時以降に昼寝をしない(昼寝はお昼過ぎに30分以内、できれば20分以内が望ましい)、気分がリラックスできる方法を日頃からさがしておく(音楽を聴く、読書をするなど)。もちろん、これが一番!というものはなく、自分の身体の個性や生活状況に合う方法を見つけなくてはいけません。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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