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神経内科通信

2015年07月号 「認知症の診断で大切なこと」

  当院で「もの忘れ外来」の取り組みを始めてからもう数年が経とうとしています。日々の取り組みは実に地味なものですが、周辺の方々に少しずつ当外来が知られつつあるのでしょうか、相談にお見えになる患者さんの数は年々増えてきているように感じます。さて、もの忘れ¬は必ずしも認知症を意味しません。今回は認知症を診断する上で大切なことを説明いたします。
 
  認知症を診断する際に大切なポイントは次の2点に尽きます。一つは、もの忘れが果たして認知症から来るものなのかどうか、ということ。そしてもう一つは、認知症であるとすれば治療によってある程度の回復が可能かどうか、ということです。まさに患者さんがお知りになりたいことではないでしょうか。
 
  当院のもの忘れ外来を受診していただく場合、詳しい問診やさまざまな検査を受けていただくことになります。問診はご本人とご家族の双方から行うわけですが、症状の始まりかた、過去にかかられた病気、現在内服なさっている薬、現在の気分の状態のチェックに始まり、さらには記憶力テスト、採血、脳の画像検査へと進んでいきます。正確な診断のためにこのような検査が慎重に実施されていくわけです。これらの検査により年齢相応なもの忘れ、薬の副作用によるもの、うつ気分を含めた心療内科領域の病気、などを見つけ出すことができます。その場合、もの忘れは認知症由来のものではないことがわかります。
 
  仮にそれらが否定できても回復の望める認知症はたくさんあります。代表的なものを挙げますと、体内ホルモンのバランス異常によるもの、脳の表面にじわじわと血液がたまっている状態などです。当院ではこれらの病気も検査によって的確に診断をつけることができます。
 
  さて、認知症の約9割を占めているものが、アルツハイマー型認知症、脳卒中後の認知症、レビー小体型認知症と呼ばれるものですが、全体の約6割はアルツハイマー型認知症であるといわれています。当外来としてもこの病気をなるべく早期に見つけ出し、適切な治療方法を考え、ご本人とご家族に対するていねいな説明を心がけています。ご存じの方も多いかと思いますが、アルツハイマー型認知症を完全に治すことは残念ながら現在の医学をもってしてもできません。しかし、ご本人のみならずご家族の方々もこの病気のことをよく理解していただき、適切な治療方法によって症状の進行を大幅に遅らせることは可能です。どの病気も早期発見が大切です。最近もの忘れが気になる、大丈夫だとは思うが認知症が心配、とお感じになられている方がいらっしゃれば、どうぞお気軽に当外来にてご相談ください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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