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神経内科通信

2015年08月号 「頸椎(けいつい)の状態は大切です」

  当外来では頭痛とめまいの診断・治療も行っていますが、通常の痛み止めの効かない頭痛や、耳鼻いんこう科で診てもらってもなかなか治らないめまいで相談にお越しになる方が非常に多くおられます。そのような方に対して、私は必ず頸椎(けいつい)、すなわち首の骨のレントゲンのチェックを行うようにしています。意外に思われるかもしれませんが、高率に異常が見つかります。
 
  頸椎のレントゲンを見る際には次の2点に留意します。まずは一つひとつの骨の形におかしい所がないかどうか、すなわち骨の変形や骨折の有無、骨と骨との間隔が異常に狭くなっていないかなどをみます。次に、頸椎の並びが乱れていないかを正面と真横から入念にチェックします。難治性の頭痛やめまいの方の頸椎をレントゲンでみますと、この骨の並びの乱れがほぼ必発なのです。実は正常の頸椎は一つひとつの骨が一列にまっすぐには並んでいません。横から見たときに前方へゆるやかに、弓状に弧(こ)を描いているのです。これを私たちは生理的弯曲(わんきょく)と呼んでいます。これが一直線上に直立状態になる(ストレートネック)、あるいは後方に逆弯曲する変化が難治性頭痛や慢性めまいの方に多いのです。
 
  では、なぜ頸椎の並びがおかしくなるのでしょうか。頸椎が自分で勝手に並びをおかしくしているのかというと、実はそうではありません。首周囲の筋肉や骨についている靭帯(じんたい)などによって無理に引っ張られた結果、骨の並びが乱れるのだと言われています。生まれつき背骨が真横に弯曲している方(側彎症(そくわんしょう)と呼ばれます)、日常的に姿勢の悪い方、交通事故によるむち打ち症の方、両足の長さが違って骨盤が傾いている方、私の経験ではこのような方々に頸椎の並びの悪さがよくみられるような気がしています。そして診察をしますとほぼ例外なく、左右の肩の高さが違ったり、後ろ首から肩にかけての筋肉にこわばりが認められます。このようなケースでは生活指導や筋肉の緊張をほぐすリハビリテーションをまず行い、経過をみながら必要に応じて筋肉の疲労や緊張を治す薬を処方しています。
 
  あなたは椎骨動脈(ついこつどうみゃく)をご存じでしょうか?これは脳に血液を送る重要な血管なのですが、頸椎から飛行機の翼のように左右に飛び出した突起の穴を通り脳に向かいます。頸椎の並びに乱れが起これば、この血管も圧迫やねじれを生じてしまい、血流が悪くなってしまいます。この状態を椎骨動脈循環不全と呼び、めまい、ふらつきの原因として重要です。頭痛持ちの方、めまい持ちの方は頸椎の検査をお勧めします。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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