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神経内科通信

2015年09月号 「肩こりについて」

  厚生労働省が定期的に行っている国民生活基礎調査によりますと、痛みを感じる身体部位の順位では、女性で肩こりが第一位、男性では腰痛に次いで肩こりが第二位だそうです。また、肩こりは首の痛みや頭痛を伴いやすいとの報告を私は多数見聞きしております。そういえば、最近では中学生・高校生といった若い世代の肩こりの訴えを耳にすることが多くなっており気になります。
 
  肩こりは非常にありふれた症状なのですが、意外なことにあまり詳しく研究 がなされていないようです。首の骨(頸椎)や肩関節の異常、後ろ首から肩にかけての筋肉の炎症、などいろいろなことが言われていますが、なかなかその正体が捕まえにくいのが実情です。私が過去に外来で行った調査では、(1)うつむき姿勢が習慣化している人に肩こりが多い、(2)慢性的に目が疲れやすい人に肩こりが多い、(3)頭痛持ち、めまい持ちの方に肩こりが多い、ということがわかっています。さらに、このような方々の首のレントゲン写真をとりますと、正常ではのどに向かってゆるやかにカーブしているはずの首の骨がまっすぐに直列しています。(この状態をストレートネックと呼んでいます。)いずれにせよ、肩こりは他に原因があって生じた結果であることは間違いないと思います。ある本の中には肩こりの原因として、高血圧、自律神経失調症、過労、寝不足、更年期障害、うつ病など、いろいろな病気が列挙されていました。
 
  福島県立医科大学整形外科の矢吹教授によりますと、肩こりがある場合には まず、首の骨の病気や肩関節の病気を除外する必要があるそうです。首や肩を動かした際の痛みの特徴やレントゲン検査で病気を探していきます。
 
  以上より、肩こりを根本的に治すためには、その原因となっているものを詳 しく調べて、改善していく必要があるということがおわかりいただけたと思います。単に鎮痛剤で痛みをごまかすだけの治療はダメ、ということですね。
 
  私は日々の診療で肩こりをお持ちの方には次のようなアドバイスを行っています。まず、仕事で首を動かせない、あるいはうつむき姿勢の多い方には業務の合間や休み時間に積極的に背伸びをすること、目の疲れ(眼精疲労)については日頃から予防しておくこと(つまり、目が疲れてしまってからでは遅いということです。)、首から肩にかけての筋肉を緩めるトレーニング(これをリラグゼーションと呼んでいます。)を心がけること、たとえば先ほどの背伸びに加えて、日常的に軽めの運動をしたり、定期的にカイロプラクティック治療院への通院を行うなどです。まずは自分の身体の特徴をよく理解したうえで、対策を練ることが大事であるといえそうです。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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