本文へ移動

神経内科通信

2015年11月号 「高齢者の健康管理(健やかに老いる)」

  私は先月で50歳を迎えました。悲しいことではありますが、このところ毎日の生活の中で、体力(身体能力)や気力の衰えを感じる場面が多くなりました。気持ちは常に30代のつもりなのですが、現実にはそううまくはいかないのだ、と素直に受け止めなければならない時期がどうやら私にも来たようです。
 
  私は最近、誰にでも平等に訪れる「老い」について真面目に考えるようになりました。今、私の手元には内藤記念くすり記念館館長の森田宏先生の著書があります。その中には江戸時代の儒学者である貝原益軒(かいばらえきけん)が記した養生訓(ようじょうくん)について述べられています。その時代は肉体と精神の安定と調和を図り、自由に生きる道を養生と称し、養生訓にはその具体的な方法が書かれているのです。以下、森田先生の文章を抜粋してみます。
 
・長寿、天寿を全うすることを心がけることが大事である。
  健康的な生活を送るためには、若い時から養生を心がけ、欲望を慎み、外部からの邪気を避け、嗜好におぼれることなく、それを生活の習慣とすることに努めなければならない。親の介護については、親を養っている人は深く寒暑の状態を知り、老人に不足しがちな気を養うように心がけなければならない。
 
・人生と寿命について
  人は50歳にならなければ本当の生き方を理解できないものである。50歳までに死ぬのは若死にである。長生きしないと、学問や知識は深まらないし、発達しない。長生きは運命ではなく、長生きしたいという気持ちが大切である。
 
・老いを養うことについて
  人の子として親の心を楽しくし、その心にそむかず、心配をかけず、苦しめないで、寒暑に従い、安楽な場所や寝室をしつらえ、食べ物にも心を配ること。
 
  老人は心静かにして自ら日々を楽しむようにもっていくこと、荒々しい言動は慎み、人と和すように心がけることが大切である。老後は人間完成の最後の仕上げの時期であり、若い者たちも含めて互いに思いやりを持つべきである。
 
  年を取ったらその時々において自ら楽しむのがよい。自分の心の中にもともとある楽しみをじっくりと味わい、天地と四季、山川の美しい景色、草木の喜び、これらもわが楽しみとして生きるがよい。このように、老後をいかに心豊かに楽しむべきかが養生訓には説かれている。
 
  江戸時代の教えがそのまま現代に通用するかどうかは別としても、非常に学ぶところの多い文章でした。今、あることわざを思い出しています。「若者叱るな来た道だもの、年寄り笑うな行く道だもの」
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
TOPへ戻る