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神経内科通信

2016年04月号 「食事と心の健康」

  前号では食事と病気予防の関連について述べましたが、今回は食事と心の健康との関連について述べてみたいと思います。前号に引き続き、福岡女子大学 食・健康学科 太田教授の講演の内容の一部を以下にご紹介いたします。
 
(1)血液中の葉酸が少ないと将来うつ状態になりやすい。
  あなたは葉酸をご存知でしょうか。葉酸は水に溶けるビタミン(水溶性ビタミン)で、ビタミンB群に分類されます。葉酸の働きは非常に重要であり、細胞の機能維持や栄養素の代謝に欠かせない成分であることがわかっています。この葉酸が不足した状態が長く続くと、数年後にうつ気分(抑うつ状態)になりやすいことが、某所地方公務員545人を対象とした研究で明らかになったそうです。次に葉酸の多い食べ物を挙げてみましょう。緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス、芽キャベツなど)、豆類(きなこ、小豆、枝豆など)、海藻類、レバー類などです。
 
(2)伝統的な日本食はうつ状態を予防する効果がある。
  憶えていらっしゃる方も多いと思いますが、平成25年12月に「和食・・日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本食の素晴らしさが、今の時代に再認識されているのは実に喜ばしいことです。さて、講演の中で健康的な日本食のパターンとは「野菜やくだもの」と「きのこ類、大豆食品、小魚」を中心に据えたものをいいます。(決して、ご飯がメインというわけではありません。)研究では、日本食を中心に食べているグループは、肉食中心、洋食中心のグループに比べ、うつ状態の発病が半分以下という結果が得られたそうです。(このデータは平成22年に発表されました。)
 
(3)コーヒー、緑茶もうつ状態の予防に役立つ。
  前号でも話題にしたコーヒーと緑茶ですが、実は心の健康にも良いことが証明されています。平成26年に発表されたデータによりますと、コーヒーを一日2杯以上、緑茶を一日4杯以上のんでいるグループは、うつ状態の発症をそれぞれ約40%、約45%低下させたそうです。
 
  まだ検討段階なのですが、私はこれまでの研究で、飲酒を始めた年齢が低ければ低いほど、キレやすくなる、怒りやすくなるというデータを持っています。(おそらく、マグネシウムという体内の微量な成分が関係しているものと考えています。)食事と健康の間には密接な関係があることは以前から明白でした、これからは科学的に食事の内容を検討し、ひとり一人に合った食事指導が行われるべき時代ではないだろうか、と思えます。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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