神経内科通信
2025年3月号 快眠を目指す(その3)
注目
前号に引き続き、寝具メーカーの開発部門で研究をなさってこられた三橋氏のアドバイスをご紹介します。氏は良眠を得るための基本的な考え方として、まずは「寝つきの良さ」を重視し、そのためには良い習慣を積み上げるのではなく、現状から悪い習慣を省く、すなわち「引き算」の考え方を提唱なさっています。
【引き算:その1】まずは寝る前の飲酒・喫煙の習慣をやめてみる
飲酒には寝つきを良くする効果があるのですが、体内でアルコールが分解される頃に自律神経が興奮してしまい、逆に眠れなくなってしまいます。就寝4時間前には飲酒を切り上げることが必要だそうです。また、たばこに含まれるニコチンは神経に対して興奮性に働く物質です。当然、不眠の原因となります。加えて、寝ている時に発作的に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」の原因になるともいわれています。就寝の数時間前には飲酒・喫煙の習慣をやめてみましょう。
【引き算:その2】午後4時以降にカフェイン(特にコーヒー)を摂らない
「コーヒーで眠気を覚ます」といわれるように、その中に含まれるカフェインには、個人差はあるものの覚醒効果があります。摂取後30分から3時間でカフェインの効果が出るので、寝る直前のカフェイン摂取は睡眠の質を落とす可能性があります。できれば午後4時以降のカフェインは避けたほうがよいですね。
【引き算:その3】寝る直前にスマートフォンやパソコンの画面を見ない
スマートフォンやパソコンの画面から出るブルーライトは脳を活性化し、体内時計を乱します。特に寝床スマホの習慣は睡眠に悪影響を及ぼします。
【引き算:その4】午後3時以降にうたた寝をしないようにすること
昼寝の習慣も気をつけなければいけません。30分以内の昼寝は夜の睡眠には影響しないそうですが、問題になるのは午後3時過ぎのうたた寝です。(もちろん、この時間であればもはや昼寝ではありませんよね。)その理由は、朝から夜にかけて次第に脳内にたまっていく睡眠物質の温存が必要になるのが午後3時以降だからです。夕方に睡眠物質を消費すれば、これは不眠の原因になります。
【引き算:その5】寝る直前にお風呂に入らないようにする
お風呂で上がった体温が、ほどよく下がるタイミングで眠気がやってきます。ですから、お風呂上りにすぐ布団に入っても、なかなか眠気はやってきません。寝つきをよくするためには、就寝約2時間前の入浴がよいそうです。
【引き算:その6】朝寝坊や夜早い時間に布団に入ることをしない
規則正しい生活で体内時計を整えましょう。朝はなるべく同じ時間に起きて、明るい光をからだに浴びることが一番大切です。
( 文・神経内科 則行 英樹 )