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神経内科通信

2025年5月号  効果的な手洗い方法

注目NEW
 

 サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」に「大切なものは目に見えない」という有名な一節があります。意味は違いますが、私は「感染症・食中毒予防に大切なバイ菌は目に見えない」と自分に言い聞かせつつ手洗いをしています。


 しかし、手洗いの重要性はわかっていても、その正しい方法を覚えるのが大変(面倒?)というのが正直なところではないでしょうか。そこで私からの提案です。手洗いの細かい手順を覚えるよりも先に、具体的に手のどの場所に汚れやバイ菌が付きやすいのかを理解する。そのうえで、その場所の汚れを落とすためには、どのような洗い方が効果的か、そのように考えてみてはいかがでしょうか。


 ある研究によりますと、手で汚れが付きやすい部位の第一位は指先で、具体的には指の腹になります。ここは日常的に触ったり、つかんだり、握ったりする場所ですから、納得はいきますね。続いて第二位です。それは手の甲でした。私は少々意外に感じましたが、よくよく考えますと、手洗いを手のひらをこすり合わせるだけで終えてしまい、手の甲をキレイにする意識が乏しいせいなのかもしれないですね。第三位は指と指の間でした。この場所も手洗いが甘くなりやすいのかもしれません。次に第四位。それは手のひらです。細かくいえば手のひらのしわと親指の付け根の膨らみとなります。そうなりますと、私たちは手洗いの時に汚れやすい部位の第四位を一生懸命にこすっているわけですね。(でも、手のひらのしわまではあまり意識していないかも。)あとは手首。手首は手のひら側も、手の甲の側も汚れやすいことがわかっています。以上により効果的な手洗いのためには、指先(特に指の腹)、手の甲、指の間、手のひら(のしわと親指の付け根の膨らみ)、手首についた汚れを想像することが大事なのだといえます。
 

 あとは実践あるのみです。よく手を濡らしてから、手のひらに石鹸・ハンドソープを塗って両手をこすり合わせ、よく泡立たせます。次に5本の指の腹をもう一方の手のひらのしわに沿ってこすります。もちろん、親指の付け根のふくらみもあわせて。反対側も同様に。次に両指を組んだ状態で片方ずつ指の間をこすります。手の甲については、寒い時に手のひらで手の甲をこすりますよね。あの要領で。手首は片手でつかんで、そのままドアノブを回すような動きでこすります。

 

 最近ではアルコール手指消毒も一般的になりましたが、先般の勉強会で私はその盲点を知りました。たとえば納豆菌。この菌はアルコール消毒が効かず、消毒後も手で増殖するのだそうです。過去には、手から直接納豆菌が体に入りこんで生命を脅かした事例があったとか。やはり基本は流水による手洗いですね。アルコール手指消毒はあくまで補助、と考えましょう。

( 文・神経内科 則行 英樹 )

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