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神経内科通信

2018年02月号 「C型インフルエンザ」

 
 ご存知の方も多いと思いますが、女優の真屋順子さんが昨年暮れ、十二月二十八日に亡くなりました。真屋さんは昭和五十一年から約十年間放映されたバラエティー番組で萩本欽一さんの奥さん役、そして見栄晴さんのお母さん役で活躍されて人気を博し、一躍有名になられました。しかしその後、度重なる脳卒中発作に見舞われて身体に後遺症を残されることになりますが、そのような状況下でも決してあきらめることなく、懸命にリハビリテーション治療に励まれて、見事に舞台復帰を果たされた経歴をお持ちの方です。また、ご自身は日田市出身で大分県にゆかりのある方でもあります。私は平成十九年三月、当時勤務していた病院で開催されるイベントで真屋さんの講演会を企画し、講師の依頼を行いました。私からの唐突な依頼にお断りのお返事を覚悟していたのですが、時を経ずして、「リハビリテーション治療に励まれているたくさ んの患者さん方のお力になれるのであれば」と講演を快諾していただきました。
 真屋さんはご主人の高津住男さん(俳優・演出家で平成二十二年に亡くなられています)と共にその年の五月に来県されました。講師控室でご挨拶をさせていただきましたが、高津さんの気さくで優しいお人柄、そして真屋さんの柔らかな笑顔は今でも忘れられません。講演の進行の打ち合わせを行いましたが、私がリハビリテーション病棟の担当医であることを知り、真屋さんご本人、そして高津さんからもリハビリテーション治療の方針についていくつかの質問を受けました。特に高津さんは非常に熱心に私の説明に耳を傾けておられ、ご夫婦が一緒になって闘病なさっているのだな、と私は思いました。
 さて、講演会のテーマは「ありのまま そのままに生きる」でした。真屋さんと高津さんの対話形式の講演でしたが、真屋さんがご自身の体験から「運命を恨むのではなく、現実を受け入れて素直な心で病気と向かい合うこと」「病気によって健康だった時よりもかえって自分を大切に思えるようになれたこと」「自分を取り巻く方々のやさしさ・心の温かさが身に染みてわかったこと」「病気だからこそ一日一日を大切にして過ごすことが大事」とお話くださいました。
 その後の真屋さんにはまたしても大動脈りゅうという病が襲いかかります。しかし、数時間に及ぶ大手術も無事に耐え、本当に気力と生命力にあふれた方なんだなと思います。講演を終えて車で病院を出る際、真屋さんは私たちに「さようならー」と大きな声をかけてくださいました。今、私たちと一緒に記念に撮影したスナップ写真と真屋さんの名刺を見ながら、いろいろと思い出します。心より真屋さんのご冥福をお祈りいたします。( 文・神経内科 則行 英樹 )

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