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神経内科通信

2018年03月号 「不眠症について」

 
 
 誤解をなさっている方が多いのですが、「眠れない=不眠症」ではありません。不眠症には満たすべき基準がちゃんとあります。不眠症は、慢性的に(目安は3ヵ月以上)夜間眠れない状態が続き、かつ、日中の眠気やだるさ、集中力や判断力の低下、気力の減退など(目安は週3日以上)により日常生活に支障が及んだ状態、と決められています。ですから、単に眠れないだけでは不眠症との診断にはならないので注意が必要です。
 国立精神・神経医療研究センターの亀井先生によりますと、いったん不眠症と診断されても、よく調べてみたら実は違う病気だった、というケースが約3割もあったそうです。その中には有名な睡眠時無呼吸症候群が含まれています。不眠症の診断はなかなか一筋縄ではいかないものなのですね。
 最近では不眠症の治療を考える際に、睡眠薬の処方のみではなく、生活上のアドバイスを行う必要性が説かれつつあります。亀井先生の説明によりますとそのポイントは3つありまして、まずは患者さんの生活習慣を正確に把握し、不眠に結びつく習慣を改善していただくこと(長時間の昼寝を避ける、就寝前のカフェインやアルコールを控える、など)を前提に、①遅寝早起きの実践、すなわち、眠くなったら床につき、朝は早起きをする習慣を身につけること。つまりは布団の中にいる時間を無用に長くしないことが大事なのだそうです。自分の身体に必要な睡眠時間を超えてしまうと、夜中に目が覚めてしまう日が増えるそうです。②眠れなかったら寝床から出ること。これは布団で眠ろ うと努力しないことを意味します。眠れないまま寝室にいる体験を習慣化してしまいますと、寝床と不眠が脳の中でセットになってしまい、不眠傾向が増してしまいます。③朝になったら、同じ時刻にたくさんの光を浴びること。早朝にたっぷりと光を浴びることによって、体内時計が整うことが証明されています。 
 それでは睡眠薬を服用する際のアドバイスについてです。今、睡眠薬を服用なさっている方々が気になさるのは「くすりがクセになってしまうのではないか」「長い間使えば、効き目が薄れてくすりの量が増えるのではないか」ということではないかと思います。前述の亀井先生は「服用している睡眠薬が通常用量でありさえすれば、クセになったり、あるいは効き目が薄れてしまう心配はほとんどない」と断言なさっています。むしろ、患者さん自身がご自分の考えでくすりの量を調節することのほうが害に結びつきやすいので注意が必要だと警告されています。益にも害にもなる睡眠薬の服用方法については、主治医によく相談し、理解なさることが大切です。   ( 文・神経内科 則行 英樹 )

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