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神経内科通信

2010年08月号 「熱中症」

  この季節になりますと水難事故や台風(大雨)被害のほか、熱中症のニュースをよく耳にします。今回は熱中症をテーマに取り上げてみます。
 
  まずは熱中症について簡単に説明いたしましょう。これは読んで字のごとく熱に「中(あた)る」病気のことをいいまして、暑さによって引き起こされる、からだのさまざまな不調をいいます。ちょっと難しくいいますと、「高温環境下や激しい運動などにより、体内にたくさんの熱が発生するような条件にある人が発症し、体温を維持するための生体反応がバランスを崩した状態から、全身臓器が機能不全に至るまでの連続的な病態」とされています。熱中症がおこる背景として、熱波や高温環境に長い時間さらされたり、スポーツ中に起こるものなどがありますが、必ずしも屋外のみでおこるものではないということに注意しなくてはいけません。日本救急医学会の調査では、高齢者の熱中症の半数が室内で起きているそうです。ここで熱中症の種類を紹介しておきます。
熱失神 ・・・・
 
暑さによって血管が拡がってしまい、血圧および脳血流が低下しておこるもので、症状としてめまい、失神などがあります。
熱疲労 ・・・・
                                
多量の汗をかいた際に水分の補給が追いつかないと脱水状態となりますが、これが熱疲労の原因です。脱水症状として、脱力感、全身倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などがみられます。
熱けいれん・・
 
大量に汗をかいた際に血液中の塩分濃度が低くなると、主に手足に痛みを伴ったけいれんがおこります。マラソン選手やトライアスロン選手などにおこりやすいとされています。
熱射病 ・・・・   
 
                               
暑さによる体温上昇のため脳(中枢神経)に異常をきたした状態です。意識障害(反応がにぶい、言動がおかしい、など)が特徴で、頭痛、吐き気、めまいなどの症状を合併します。時に脳をはじめ、心臓、肺などの血管が血栓によりつまることがあり、死亡率も高くなります。
 
  さて、熱中症は予防が大切になります。予防のためにはいくつかのポイントがありますが、その主なところでは、(1)日頃から体調を整えておくこと。(例えば、長きにわたる食欲不振や寝不足、疲労状態、二日酔いなどでは熱中症にかかりやすいことが指摘されています。)(2)炎天下・高温下に長時間いないこと。(日差しが強ければ帽子をかぶる、適度に木陰で休む、など。) (3)水分補給をしっかり行っておくこと。以上が挙げられると思います。
 
  もし、熱中症の症状がみられたら、涼しい場所に避難した上でからだを冷やし、すみやかに病院を受診してください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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