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神経内科通信

2011年03月号 「心房細動(しんぼうさいどう)」

  私は若い頃、北九州市にある救命救急病院で主に脳梗塞の治療について学び、現在では脳梗塞の予防とそのリハビリテーションを専門にしています。長いこと脳梗塞の恐ろしさを目の当たりにしてきまして、やはりこの病気は予防することがとても大切なのだという結論に至りました。脳梗塞は予防可能な病気なのです。まずそのように認識してください。
 
  脳梗塞には二大原因があります。それは動脈硬化と不整脈です。動脈硬化とは誰にでも起こる血管の老化現象であり、生活習慣の是正や糖尿病、高血圧やコレステロールのコントロールなどにより管理することができます。時に明らかな動脈硬化がなくても脳梗塞を起こすことがあり、特に心房細動という不整脈の合併には注意しなければなりません。
 
  心臓には心房という部屋と心室という部屋があり、その中を血液が流れています。この心房と心室とが規則正しく順番に縮むことにより、その中をスムーズに血液が流れるわけです。心房細動では、この心房の規則正しい縮みがなくなっていまい、細かくふるえるような、不規則な動きになってしまいます。
 
  お餅つきに例えます。臼の中にある炊き立てのもち米を手でかえす人(心房)のかけ声が杵(きね)を持つ人(心室)に伝わり、規則的なお餅つきのリズムができるわけですが、もち米をかえす人のかけ声が非常に細かく不規則になり、お餅をつくタイミングがバラバラになった状態が心房細動といえます。
 
  心房細動は常時起こっている場合もあれば、発作的に起こる場合もありますが、いずれにせよ薬で治すことが難しいことが知られています。そうなりますと心房細動から生じる血栓を予防する薬が必要となりますが、多くの病院でよく使われているものが「ワーファリン」という薬です。
 
  この薬はしっかりと効き目をコントロールしないといけません。効いていなければ血栓ができるかも知れないし、効きすぎれば逆に出血を起こす可能性があるからです。外来では定期的に採血をして効き目を確かめます。ついでに言いますと、内服されている方は納豆とクロレラの摂取を控えていただかなくてはなりません。これらの食事は薬の効果を弱めてしまいます。また、他の薬との飲み合わせも一応注意が必要です。
 
  最近ではワーファリンに替わる新しい薬が開発されていまして、この薬は食事による影響を受けにくく、採血による効き目のチェックがいりません。おそらく今後、ワーファリンは処方されなくなるでしょう。不整脈が気になる方は、当外来で気軽にご相談ください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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