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神経内科通信

2011年11月号 「肥満と食事について(その4)」

  数回にわたって日本体育大学大学院の大野教授が行った講演会の内容をご紹介しています。今回は効率的な体脂肪の燃やし方について考えます。
 
  減量のためには食事療法と運動療法の双方が大事です。しかし、それぞれ単独での減量は失敗しやすいことがわかっておりまして、例えば、運動をせずに食事を減らすだけで減量を試みたとしましょう。食べる量を減らしますと、身体がそれに対応してエネルギー消費を抑える(専門的には基礎代謝を下げるといいます)状態になってしまい、結局なかなかダイエット効果は上がりません。加えて、血糖を下げるインスリンの反応が低下してしまい、さらには筋肉や骨までが弱ってしまうことにもなりかねません。これでは身体をこわしてしまいます。それでは運動療法のみではどうか。ここで体脂肪1キロ燃やすことを考えてみましょうか。一般に体脂肪1キロを減らすためには約7200キロカロリーの消費が必要であることが知られています。約2時間半かけて走るフルマラソンで消費するカロリーは約2300キロカロリーですから、マラソンだけで1キロの体脂肪を燃やすためには、フルマラソンを3回も走らなければならない計算になります。運動だけの減量ってこんなにも大変なのですね。ですから、体脂肪を燃やす場合には食事療法と運動療法の併用が大切で、「食事療法が主で運動療法が従」ということがおわかりいただけると思います。
 
  それでは理想的な食事について考えてみましょう。肥満を予防・改善するにはエネルギーが適度に制限されていて、かつ栄養バランスがとれた食事が理想的です。この低エネルギー・バランス食というのは、実は糖尿病治療食の原則と全く同じなのです。従いまして、自宅で毎日、糖尿病治療食を食べることが望ましいということにはなるのですが、エネルギー計算や栄養バランスを考慮した食事が毎日自宅で作れるかとなると、これはもう不可能といってもよいでしょうね。そこで大野先生の提案です。糖尿病治療食の宅配を利用したらどうかとのことでした。地域や会社により金額に差はありますが、だいたい一食あたり700~800円だそうです。値段的にはやや高いかなとは思いますが、自宅にいながら入院食と同じ食環境が整うことを考えれば決して高いとはいえないかもしれません。
 
  できれば1日2回、最低でも1日1回夕食でも構わないので試してみてくださいとのことでした。(もちろん、間食はダメですよ。)大野先生の研究ではこの食事形態に運動療法を併用して良好な減量効果をあげているとのことでした。
  運動療法については次号にて。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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