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神経内科通信

2012年02月号 「脳血栓症の(再発)予防」

  当外来は今年の目標の一つに「脳卒中予防の啓発活動」を掲げました。以前にもこの通信でお伝えしましたとおり、寝たきりの最大要因である脳卒中は予防することが可能な病気です。特に血管の老化現象(動脈硬化)を原因とする脳血栓症は生活習慣病にも関連し、世間的にも関心は高いのではないでしょうか。それでは具体的にどうすれば脳血栓症は予防できるのでしょう。
 
1.頭部MRI(頭部CT)と頸動脈の検査(頸部MRA)を受けること。
  最近の検査機器の進歩は著しく、例えば頭部MRIでは脳にできたごく小さな病変も確認できるようになりました。(症状のない脳こうそく:無症候性脳こうそくがよく見つかります。)当外来には、今のところ症状がないけれども、一度は脳梗塞がないかどうかを調べてほしいと受診される方が増えてきています。ほとんどの方は異常なし、との判断になりますが、少なからぬ方に脳こうそくが見つかり、その日から血栓予防薬を服用してもらっています。また、動脈硬化の進行は特に頸動脈にハッキリと出てきますので、現状で脳梗塞が認められなくても頸動脈の老化現象の強い方には血栓予防薬を処方することもあります。ですから、「症状がないからこそキチンと調べておく」ことはとても大切なことだといえるでしょう。ましてや、ご家族に脳卒中や心筋こうそくの方がいらっしゃればなおさらです。当院でも脳こうそくや動脈瘤、頸動脈の狭窄(きょうさく:細くなってせばまっている状態)などを調べることができます。
 
2.食習慣、生活習慣を見直すこと。
  検診の結果、毎年同じ異常が指摘されているにもかかわらず、それを放置されている方があまりに多いのに驚いています。自覚症状がでない「異常」については悪い意味での「慣れ」が生じてしまうためでしょうか。肥満、高血圧、糖尿病、コレステロールなどの異常が指摘されたら、それらについてはしっかりと自己管理を、すなわち医師のアドバイスを踏まえて食習慣や生活習慣を見直すことが大事です。それをしなければ検診を受ける意味が全くありません。
 
  血管の老化現象(動脈硬化)は生きとし生けるものの宿命ではあります。ですが、予防ができる血管病は何としてでも予防して、気持ちよく生活していきたいものですね。最近、ある大学の研究チームから衝撃的な内容の発表がなされました。不幸にして交通事故で亡くなった健康な9歳の女の子の血管に、すでに動脈硬化性の変化があったというのです。平均寿命が世界トップクラスの我が国が、寝たきり率も世界トップクラスでは悲しすぎます。血管病予防について世間の関心が高まることを私は願っています。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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