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神経内科通信

2013年02月号 「脳卒中を予防するために(その1)」

  先月号にも記しましたが、当外来が目指す目標の一つに「寝たきりの原因となる病気の予防」があります。何といってもその代表格が脳卒中なのですが、今月号から数回のシリーズで、脳卒中の予防策について考えてみたいと思います。日本脳卒中協会が発表した「脳卒中予防十か条」をもとに解説しましょう。
 
1.手始めに 高血圧から 治しましょう
  ご存じのように、高血圧は脳卒中の原因として極めて重要なのですが、自覚症状が出にくいこと、そして直接の死因として耳にする機会がないことから(親族の方やご近所の方が「がんで亡くなったよ」「心臓病で亡くなったよ」と聞くことはあっても、「高血圧で亡くなったよ」とは聞きませんよね。)、患者さん本人に治療への意欲や危機感が起きにくく、治療に苦労することがたびたびあります。現在、わが国で高血圧を有する人は約4000万人とされています。そして、上の血圧の平均値を「2」下げるだけで。年間の脳卒中の死亡者を約1万人減らすことができるとの報告があります。もちろん、同時に寝たきり患者さんの総数を大幅に下げることにもつながるわけです。個々人の生活の質を維持するためにも、右肩上がりに増え続ける医療費を抑えるためにも、そして貴重な社会的資源である働き盛りの世代の脳卒中を予防するためにも、多くの方々が脳卒中予防に関心を持っていただきたいと願っています。その第一歩として私たちは、高血圧を放置することの怖さを知らなければなりません。
 
  脳卒中に関していえば、高血圧は脳の血管(動脈)をむしばむのだと知っておく必要があります。もちろん、血圧の上昇がひどければ脳の動脈が破れて出血(脳出血、くも膜下出血)が起きるわけですが、長期にわたって高血圧を放置すれば血管の老化(動脈硬化)を異常に早めてしまい、結果としてボロボロになった動脈は破れたり(脳出血を発症する)、つまったりする(脳こうそくを発症する)ことになります。そうそう、あなたはご自分が目指すべき血圧の数値をご存じですか?くすりを飲んでいるから大丈夫、なんて思い込んでいませんか?高血圧が内臓に及ぼす影響を理解されていますか?こういったことを日頃からかかりつけ医(主治医)とよく話し合い、納得されたうえでご自分の生活習慣を見直し、くすりを指示通りにキチンと服用することが大切です。
 
  生活習慣のことにちょっと触れておきます。2009年に発表された「高血圧治療ガイドライン」に、塩分制限、くだもの・魚(油)の摂取促進、運動、減量、アルコールの制限、禁煙などが重要だと書かれています。高血圧の方には学ぶことが数多くあるのですね。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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