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神経内科通信

2013年04月号 「脳卒中を予防するために(その3)」

  先月号に引き続きまして、日本脳卒中協会が発表した「脳卒中予防十か条」の解説を進めてまいります。
 
その3 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
  不整脈とはどのような状態をいうのでしょうか。心臓は1分間に60~100回ほどの頻度で規則的に鼓動します(脈を打ちます)が、正常な状態では運動や感情の高まりなどで脈が速くなり、逆に落ち着いていれば脈はゆっくりとなります。しかし、時に何の誘因もなく勝手に脈が速くなったり、ゆっくりになったり、あるいは不規則になったりすることがあり、この状態を不整脈といいます。この不整脈の中には健康に影響を及ぼさないため、治療を必要としないものがある一方で、脳卒中の引き金となる危険ものがあるので注意を要します。特に気をつけねばならないものが、心房細動(しんぼうさいどう)という種類の不整脈です。紙面の関係でくわしい説明はできませんが、この不整脈は脈が不規則となり、心臓の中で血の塊(血栓)を作りやすく、それが心臓の壁からはがれて血流にのって脳血管に飛べば、脳の動脈をふさいで脳こうそくになります。(これを心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)といいます。) もちろん、心房細動が発見されれば薬による治療を行うわけですが、このタイプの不整脈は薬の力で治すことが非常に難しいために、脳こうそくを予防する目的で、心臓内で血栓を作らせないようにする薬を飲んでいただくことになります。現在、当外来ではワーファリン、プラザキサ、イグザレルトという薬を処方していますが、これらはすべて血液が塊を作りにくくする(凝固しにくくする)作用を有しています。
 
  心房細動には一日中ひっきりなしに起こっているタイプと発作的に出現するタイプとがあり、また脈が速くて不規則なタイプもあれば、脈が遅くて不規則なタイプもあります。いずれにせよ、未だにはっきりとした原因が分かっておらず、長期にわたる高血圧が原因ではないか、自律神経の作用によるのではないか、などさまざまな学説があります。したがって、残念ながら今のところ決定的な予防方法はありません。ですから、早期にこの不整脈を発見し、病院を受診した上で適切な治療を受けることが肝要になります。日頃からよく動悸を自覚している、脈が飛びやすい、といった症状があれば早めに病院を受診し、医師の診断を受けてください。脳こうそくはそれまで一生懸命に積み上げてきたものが一瞬にして崩れ去る可能性を持つコワイ病気です。私は脳こうそくの予防を徹底的に呼びかけていきたいと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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