本文へ移動

神経内科通信

2013年06月号 「脳卒中を予防するために(その5)」

  先月号に引き続きまして、日本脳卒中協会が発表した「脳卒中予防十か条」の解説を進めてまいります。
 
その6 高すぎる コレステロールも 見逃すな
  最近の研究で、血中のコレステロールは多すぎても少なすぎても血管を傷つけることが判明したため、従来「高脂血症」「高コレステロール血症」と呼ばれていたものが、この頃では「脂質異常症」と称されるようになりました。コレステロールの異常は、高血圧や糖尿病と同じように動脈硬化(血管の老化)を異常に早く進めますので要注意です。採血結果で特に留意を要するのは、中性脂肪、悪玉コレステロール(LDL)、善玉コレステロール(HDL)の数値です。
 
  これらの数値に異常があれば、速やかに生活習慣(食事や運動)を改善しなければなりません。薬を飲めばそれでいい、とお考えの方も多いと思いますが、薬が十分に効果を発揮するためには、薬の効きやすい身体をご自分の努力で作っていただかなくてはいけません。主治医とよく相談をなさってください。脂質異常症は高血圧や糖尿病に比べて危機感が薄い傾向があるようで、健康診断で毎年指摘されているにもかかわらず、放置なさる方が多いようです。
 
その7 お食事の 塩分・脂肪 控えめに
  昔から「医食同源」と言われるように、日頃の食事内容には十分な気配りが必要ですね。脳卒中予防の観点で言えば、塩分、脂肪分、加えて水分の摂取にはぜひとも注意をお願いしたいと思います。塩分、脂肪分は本来、身体に必要な成分なのですが、多く摂りすぎますと血管や内臓をじわじわと痛めていきます。毎日の食習慣を見直し、「栄養はバランスよく、塩分、脂肪分の摂取はほどほどに」を原則になさってください。
 
  さらに私が強調したいのは水分摂取についてです。脳の動脈がつまる脳こうそくは冬場のみならず、真夏にも多く発症します。これはなぜかと言いますと、夏場は身体の水分が減る「脱水状態」になりやすいからです。悲しいかな、年齢を重ねていきますとのどの渇きを感じる神経が鈍ります。そうしますと、日常的に脱水状態となってしまい、のどが渇いた時にはすでに脱水症となっているかも知れません。さらに困ったことに、トイレに行くのを嫌って、水分をわざと避ける年配の方が多く、脱水状態を加速させてしまうことが多くあるようです。脱水症は血液をドロドロにしてしまい、脳の血のめぐりを悪くしたり、血液を固めやすくすることがあり、きわめて危険な状態といえます。のどが渇かなくても適度の水分摂取が必要となります。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
TOPへ戻る