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神経内科通信

2013年11月号 「この10年を振り返って」

  平成25年10月より、ここ酒井病院での勤務が12年目を迎えることになりました。平成14年に大分医科大学第三内科(現:大分大学医学部神経内科)の命により中津にご縁ができ、以降現在までつつがなく業務を続けることができた身の幸せを感じているところです。外来を支えてくださった皆さまに心から御礼を申し上げます。また、今後ともよろしくお願いいたします。
 
  酒井病院の外来では神経内科疾患にとどまらず、循環器科領域、リハビリテーション科領域と幅広く診療させていただいておりますが、これまで私は患者さん方との二人三脚の医療を心がけてまいりました。何を今さら、という感もありますが、私の治療指針をここで2点ほどご紹介させていただきます。
 
1.薬の効きやすい身体をご自分の努力で作っていただくこと
  最近では有効性と安全性に優れた薬が多数開発されておりまして、治療薬の選択がひろがり、医者として大変処方が楽になりました。しかし、そのことと並行して、薬に頼りすぎる傾向が医者のみならず、患者さん方にも広がってきているように感じます。風邪をひけば感冒薬、血圧が高ければ降圧剤、頭痛があれば頭痛(鎮痛)薬、胃の調子が悪ければ胃薬。これらの治療方法は決して間違っているわけではありませんが、私はいささか違和感を抱くのです。もちろん、有効な薬は積極的に使用するべきなのですが、それらの薬の効きめが最大限に発揮できるような身体の準備を、患者さん方は日々なされるべきではないかと考えます。風邪薬を服用すると同時に栄養や安静を考える、血圧の薬を服用するとともに、塩分の摂取や血圧を高くする生活習慣を反省する、頭痛薬を服用するとともに、頭痛を来たしやすくする習慣を是正する、などです。このことはひいては病気の予防にもつながり、大切なことと私は理解しています。
 
2.病気と上手に、おおらかに付き合っていくこと
  当院に通院される患者さんには、数日間で治る病気の方から、一生持ち続けなければならない病気の方までさまざまおられます。特に神経系の難病をお持ちの方々の苦しみ、つらさを直接伺う度に、現代医学の無力さを痛感いたします。しかし、その病気を完全な敵とするよりも、上手に付き合うべき相手と考えることも意味があるのではないか、と思えることがあります。今、出来ないことを嘆くよりも、出来ることを思い切り楽しむ、という考え方もありではないでしょうか。ある患者さんが笑いながら言われました。「最近わしゃ、何でんかんでん忘る。忘れすぎて死ぬことすら忘れしもうた」と。このようなドライな考え方に学ぶことが多くあるように思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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