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神経内科通信

2014年03月号 「光公害」

  現代社会は生活が非常に便利な時代となっていますが、どうやら私たちにとって何もかもがいいことだらけ、とはいかないようです。アメリカ医師会が警告を発している光公害もその弊害の一つといえます。
 
  最近では省エネ政策の一環として光ダイオード(LED)による照明が推奨されています。それ自体は決して悪いことでもなんでもないのですが、特にブルーライト(青色光)の使用には若干注意が必要です。平成17年に人体で体内時計の役割をする部位が明らかになりました。その研究報告によりますと、睡眠のリズムを決めるのはブルーライトであることがわかったのです。すなわち、朝になれば起きる、夜になれば寝るというリズム、これは単なる光(明るさ)による作用ではなく、ブルーライトが引き金になっているとのことでした。
 
  光ダイオードは照明、コンピューター、スマートフォンなどに使用されますが、白色電球とされているものにもブルーライトが含まれているので注意が必要です。夜、ブルーライトを目にしますと、夜であるにもかかわらず脳は昼と認識してしまい、不眠症や体内時計の不具合を来たしてしまうことになります。慶應義塾大学の坪田教授によりますと、心配なのはパソコンやスマートフォンを夜遅くまで使用する若い方々だということです。これまでは目の疲れを心配するだけでしたが、これからは体内時計の乱れについて広く啓発していかなくてはならないと力説なさっています。人工的に作り出した青色光を長時間あびる生活は人類史上初の出来事であり、今後の研究が大切だとも言われていました。ねずみを用いた実験では、長時間ブルーライトをあびると光を感じる目の神経(網膜:もうまく)に障害が観察されたそうです。
 
  これまでブルーライトの悪い側面のみを強調してきましたが、実はブルーライトにも優れた面があり、脳の活性化(気分がすぐれる)作用を利用して、例えば駅では気持ちを元気にし、自殺を予防する効果が期待されています。有益か有害かは用い方次第といったところでしょうか。
 
  さて、ブルーライトの弊害から身を守るためにはどうしたらよいかです。まず、光ダイオードの照明は夕方以降に暗くする、夜間パソコンやスマートフォンを長く使用しない、やむを得ず使用するときには極力画面から目を離す、ブルーライトをカットするめがねを着用する、といった対策方法が考えられます。
 
  これも坪田教授の話ですが、ブルーライトから目を保護するのに非常によい食べ物があり、それはホウレンソウだそうです。ホウレンソウの中のルテインという物質が目を守るとのことでした。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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