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神経内科通信

2014年04月号 「慢性じん臓病]

  突然ですが、あなたはじん臓をご存じですか?じん臓は背中(腰)のあたりに左右2個ある、そら豆の形をしたやや小ぶりな臓器です。それではじん臓の仕事は何かご存じでしょうか?一番有名な働きは、体内で生じた老廃物を水に溶かして「おしっこ」を作ることでしょう。じん臓は血液によって運ばれてきた成分を必要なものと不必要なものとに分けるフィルターの役割を担っています。それだけではありません。おしっこを濃くしたり薄くしたりすることで体内の水分バランスを一定に保ったり、血圧を調整するホルモンを出したり、骨にカルシウムを定着させるビタミンDを活性化したり、血液を造るホルモンを出したりなど、実にさまざまな働きをしています。このじん臓が慢性的に機能を低下させた状 態を慢性じん臓病と称し、現在わが国では約1300万人の患者さんがいると言われています。これは成人の8人に1人が発症している計算になり、慢性じん臓病が新たな国民病といわれる所以(ゆえん)です。この状態を放置すれば脳卒中や心筋こうそく、心不全や血液中に有害な物質がたまっていく尿毒症などになりやすくなり、進行すれば血液透析(とうせき)やじん臓の移植が必要となるため、予防と早期発見が大切です。
 
  生活習慣の乱れにより(生活習慣病を含む)腎臓への負担が大きくなると慢性じん臓病になりやすくなります。高血圧や糖尿病は言うに及ばず、暴飲暴食、たばこ、運動不足、不規則な生活など、日々の生活の中で思い当たることはないでしょうか。慢性じん臓病の初期には自覚症状が全くなく、注意を要します。
 
  この慢性じん臓病を早期に発見するポイントはなんでしょうか。まず簡単に調べることができるのは「おしっこ(尿)」です。尿検査で蛋白尿が陽性になることからも発見できますが、おしっこの色が濃かったり、泡立ったり、夜間に頻繁にトイレに行くことから発見されることもあります。他には、顔色が悪い、むくみがひどい、立ちくらみが起こりやすい、疲れやすい、常にだるい、息が切れやすいといった症状もみられます。(もちろん、これらの症状はじん臓病以外の病気でも起こることがあるので、しっかり検査する必要があります。)
 
  次に慢性じん臓病を悪化させないために大切なことをお話しします。治療の基本はくすりではなく食事療法です。これは高血圧、糖尿病にも言えることですね。塩分制限、低たんぱく食、カリウム(野菜や果物、豆類等に多く含まれます)とリン(たんぱく質を多く含む食品や乳製品、加工食品、インスタント・レトルト食品などに多く含まれます)の制限が基本です。まずは早期発見のため、おしっこを調べてみてはいかがでしょう。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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