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神経内科通信

2015年03月号 「高齢者の便秘」

  昔からよく「快食・快眠・快便」と言われていますが、毎日美味しくご飯を食べることができ、質のよい睡眠がとれ、気持ちよく便が出ることが快適な生活の基本と言えそうです。排便回数が週2回以下となってしまう状態を便秘といいますが、今回は特に高齢の方の便秘を考えてみたいと思います。
 
  便秘はすべての世代にみられるわけですが、高齢者の方の場合には「便秘薬を出してハイおしまい」というわけにはいきません。頻度はさほど高くはないのですが、時に腸の病気(大腸がんを含む)が見つかることがあるからです。これまで便秘体質ではなかった方が急に便秘になった場合、当外来としては必ず消化器科を受診していただくようにしています。
 
  では高齢者の方の便秘の原因をいくつか考えてみます。まずは水分不足。これは間違いなくあると思われます。高齢になりますと、のどの渇きを感じる神経が鈍くなる上に、トイレが近くなることがイヤで水分をわざと遠ざけている方もおられます。水分と食物繊維とで軽い便秘症は治るとされています。次に運動不足。これは仕方のない側面もありますが、足を使わないと確かに腸は怠けていくようです。実際に病院で長く寝たきり状態にある方には、ほぼ全員といってよいくらい便秘の薬が出さていることからもわかります。次には筋肉の衰え。排便にはお腹の筋肉をはじめ、骨盤にある筋肉の力が必要なのですが、他の部位の筋肉と同様、歳と共に排便に用いる筋肉の力が衰えてしまい、結果として排便が困難になってしまうことがあります。最後に筋肉の衰えと同じく、便が出そうと感じる神経(便意を感じる神経)の働きも衰えることがあり、若い頃にはハッキリと感じていた便意が弱くなり、トイレに行くタイミングを逃してしまいそれが習慣化してしまう、といったことも考えられます。
 
  便秘の方には便秘薬をお出しします。しかし、お薬が効きやすい身体を日頃から作っていただく努力も必要かと思います。まずは食事。適切な水分、それから食物繊維を摂っていただきます。次に適度な運動。一日中じっとなさると腸の働きを落としてしまうかもしれません。なるべく足を使った運動を考えてください。腹筋をきたえるのも便秘の解消に効果的です。また毎日、朝食後30分から一時間後くらいにトイレに座るクセをつけるのもいいのではないでしょうか。この時間帯が一番自然に排便しやすいのです。
 
  便秘薬として約30年ぶりに新しい薬が登場しました。慢性の便秘に悩まれている方は試してみられるのもよいでしょう。くどいですが、定期的な大腸がん検診をお忘れなく。以上、便秘のお話でした。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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