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神経内科通信

2016年10月号 「なかなか難しい減塩」

なかなか難しい減塩
 今年8月22日の大分合同新聞(朝刊)に気になる記事を見つけました。見出しは「日本人の減塩進まず」とありまして、塩分の取り過ぎは身体に毒とわかっていながら、なかなか減塩の習慣が根づかない日本人の食習慣の現状が取材されていました。非常に興味深い内容でしたので、ご紹介いたしましょう。
 一日当たりの塩分摂取量には国が定めた目標がありまして、成人男性が8グラム未満、成人女性が7グラム未満となっています。東京大学で栄養学が専門の佐々木教授が、3年前に成人の一日塩分摂取量を調査したところ、男性の平均値が14.0グラム、女性の平均値が11.8グラムと国の目標を大きく上回っていたことが判明しました。一時期の健康ブームもどこへやら、とんでもない数値で驚きます。なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。
 新聞の記事によりますと、塩分摂取過多の原因としては、調味料(しょうゆ、塩、みそ)の使用量が多いこと、各種加工品が簡単に手に入ること、が挙げられていました。新潟県立大学で公衆栄養学が専門の村山教授によれば、働き盛りの世代では濃い味のついた主食(ラーメン、うどん、カレーライスなど)や食器一つで済む食事の頻度が多いことが関係しているらしく、また、自宅で食事を摂る機会が多い60歳代以上では煮物や漬物の皿数や種類が塩分量に関係しているとのことでした。つまり、若い世代では食事の好みや調理の簡単さが関係し、年配の世代では調理方法や献立の組み方が問題だということでしょうか。
 以上を踏まえて、新潟県では「塩分の取り過ぎにつながる10の食習慣」というパンフレットを作成したそうです。この中には意外に気が付かないことが挙げられていますので、以下に記しておきたいと思います。
① 食事は満腹になるまで    ② 主食を一度に2つ以上(主食重ね)
③ 丼物、カレー、めん類を週3回以上
④ 煮物を1日4皿以上     ⑤ 漬物を1日2種類以上
⑥ 魚卵を1日1回以上     ⑦ めん類の汁を3分の1以上飲む
⑧ 濃い味付けを好んで食べる  ⑨ 週に2回以上外食
⑩ 毎日お酒を飲む
 前述の佐々木教授は「人の味覚は大昔から体に必須な塩をおいしいと感じるようにできている」とおっしゃっています。私たちはこのことを理解しつつも、健康のためにしっかりと減塩の習慣を身につけなければなりません。「きれいな花にはトゲがある」の例えよろしく、「美味しいものには毒がある」という意識が必要なのかもしれません。          
 
                    ( 文・神経内科 則行 英樹 )
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