神経内科通信
2017年03月号 「ビタミンC」
最近、健康への関心の高まりを受けて、外来で健康食品やサプリメントについての質問を数多く受けるようになりました。その中でも特にビタミンに関する質問が多い傾向にあり、今回はビタミンCをテーマに説明いたします。
あなたはビタミンCの働きをご存知ですか? ビタミンCは活性酸素(細胞を傷害して老化を進める物質)を消し去り、皮ふ・粘膜・血管・骨に多く含まれているコラーゲン線維を作り、鉄分の吸収を促して貧血になりにくくしたり、メラニン色素をおさえてシミやそばかすを作りにくくしたり、コレステロールをはじめとする数々の物質の代謝に関与するなど、実に多くの働きがあります。このビタミンCが慢性的に不足しますと、初めのうちは皮ふの乾燥、脱力感、うつ気分が出現し、やがては皮ふに出血斑(いわゆる「打ちジミ」のことです。)が生じ、全身に出血が認められるようになります。この状態は壊血病と呼ばれていま
す。イヌやネコはビタミンCを自分の体内で作り上げることができるのですが、残念ながら人間はそうはいきません。毎日の食事の中で摂らなければいけないのです。しかも、ビタミンCは非常に水に溶けやすく、体内では簡単におしっこの中に溶けて外に出てしまい、からだの中にとどまりにくいのです。つまり、食事からたくさん摂っても体内に貯蓄できないのですね。
昨年、東京都健康長寿医療センターの石神先生は非常に興味深い実験結果を発表されました。ねずみを使った動物実験なのですが、ビタミンCを普通に摂らせたグループとビタミンCを慢性的に不足させたグループとに分け、それぞれ寿命に差が出るかどうかをみたところ、50%生存期間(グループの半分が生き残った期間)が、ビタミンCを普通に摂らせたグループが約2年、不足させたグループが約半年という結果だったそうです。石神先生は「ビタミンCの長期的な不足は寿命を短くさせる可能性がある」と結論づけられました。
さて、どのような食事をすればビタミンCをしっかり摂ることができるのでしょうか。このビタミンはくだものと野菜に豊富に含まれています。特に豊富に含まれている食品をざっと挙げますと、パセリ・ブロッコリー・ピーマンなどの緑黄色野菜、他にはキウイ・レモン・いちごなどです。もちろんサプリメントからも摂取できますが、時に製造過程でさまざまな添加物が使われているケースがあり、純粋なビタミンCではないことがありますので注意が必要です。(サプリメントに関しては製造元の信頼性が効果のカギを握ります。)また、たばこを吸いますと体内のビタミンCが余分に消費されてしまうそうです。喫煙習慣のある
方はビタミンCを積極的に摂りましょう。
(文・神経内科 則行 英樹)