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神経内科通信

2017年04月号 「深部静脈血栓症」

 早いもので熊本の大地震から一年になりますが、現地ではまだまだ復旧途中と伝え聞きます。被災された方々が心身ともに健康で、一日も早く、普段通りの生活を取り戻すことができますように祈念したいと思います。
 
 さて、このような大災害がありますと、避難所、あるいは車中泊で発生する深部静脈血栓症のニュースをよく耳にします。「エコノミークラス症候群」という名前のほうが有名かもしれません。この病気は長い時間、足を動かさずにじっとしていると、足の中を心臓に向かって流れる血液がよどみ、血栓と呼ばれる血のかたまりが生じて血管を詰めてしまうものです。足だけではなく肺の血管を詰めることもあり、最悪のケースでは生命を落とすことすらあります。
 
 日本医師会ニュースによりますと、この病気は避難所生活以外にも、高齢者、肥満、がん、外科手術後、妊娠・出産、けが、足のまひ、避妊薬を服用している方、もともと血液が固まりやすい体質の方などに発症しやすいとあります。
 
 深部静脈血栓症の症状ですが、無症状であることが多いとされていますが、症状がみられるほとんどのケースでは片足のむくみ、(たとえばふくらはぎや太ももの「はれ」)、だるさ、痛み、赤みで気づかれます。典型的にはむくみがある場所を手でにぎると痛みが走ります。この病気はまず疑うことが大事。手遅れは命取りになることすらありますので、可及的速やかに病院を受診しなければいけません。検査で診断をつけた後に、血栓を溶かす薬や血栓を作りにくくする薬などが投与されます。場合によっては手術によって血栓を取り除きます。
 
 この病気の予防方法ですが、先のニュースによりますと、「(避難所生活では)歩行や足首の運動、脱水を避けることなどが有効」と書かれています。(脱水は非常に危険で、先の地震ではトイレに行きたくないがために水を飲むのを我慢し、結果、血液がドロドロになって血栓を作ったケースがあったそうです。
 
 ここで運動について簡単に説明しておきましょう。ふくらはぎの筋肉を伸ばしたり縮めたりすることで足の血行(心臓に帰る血液のめぐり)は良くなります。したがいまして、上向きに寝た状態・あるいは座ったままの姿勢でつま先を上げたり下げたり、足首をゆっくり回したり、片足ずつ膝を曲げたり伸ばしたりをくり返すことがこの病気の予防のポイントになります。もし自分で足を動かせないときには、他の方に足首から膝に向けて「ふくらはぎマッサージ」をしてもらうことも良いそうです。深部静脈血栓は必ず予防できることを知っておいていただければと思います。くり返しますが、この病気は疑うことが大切です。先ほどの症状があれば直ちに病院に受診を。    
 ( 文・神経内科 則行 英樹)
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