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神経内科通信

2017年07月号 「口角炎」

 毎年冬になりますと、私の唇の両隅はひび割れを起こし、塩気のものがしみてつらい思いをします。似た経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。唇の両隅は口角(こうかく)と呼ばれます。この場所に炎症が生じた状態を口角炎といいますが、今回はこの口角炎をテーマにお話したいと思います。
 口角の炎症はどのように生じるのでしょうか。本で調べてみますと、口角が乾燥したり、さまざまな要因でキズが入ったりすることがきっかけとなって起こるようです。そういえば、私は口を開けたまま寝ているようなので、冬場、乾燥した夜の空気を口に吸い込んでいるうちに口角が乾燥し、ひびが入って炎症を起こしているのかも知れません。目覚めた時にひどく口が乾燥しています。
 また、唾液は普通の水と違って消化酵素の役割もしているので、口角の傷が唾液に触れるだけでも炎症が悪化しそうな気がします。実際に口角にキズがなくても、この場所を舌でなめるクセのある方は口角炎になるそうです。
 では、口角炎を予防するためには何をすればよいのでしょうか。もともと口角の乾燥が口角炎のきっかけになるわけですから、くちびるを含めて日頃から口角がかさかさにならないようにすればよい、ということになります。一番簡単な対処方法はリップクリームによるくちびると口角のケアになると思います。
この時に注意することが一つあります。塗るとひんやりとする刺激性の成分(メンソール)を含むリップクリームを時にみかけますが、これを使わないこと。スース―する成分はそれ自体が口角の傷を悪化させることがあるそうです。
 最後に口角炎の治療です。一般には口内炎で用いる軟膏(ステロイド剤)が使われます。1日3回程度塗れば数日程度で治るようです。なお、ビタミン剤は無効とされていますので、外来で処方することはまずありません。
さて、予防に勝る治療はありません。私は今年の冬からくちびると口角の乾燥を予防すべく、気合を入れてスキンケアに励みたいと思います。
 
外来通信が十一年目を迎えました
 
 この外来通信は通算121号になります。平成十九年の六月号から始まったこの通信ですが、まる十年を経て十一年目に入りました。私事ですが、第1号発行の翌七月に長女が誕生し、その長女も今月で十歳の誕生日を迎えます。一回も欠けることなく毎月発行ができましたのも酒井病院の外来スタッフの方々と、何よりも私の外来を支えてくださる患者さん方のお力添えのおかげです。心より感謝を申し上げたいと思います。  ( 文・神経内科 則行 英樹)
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