神経内科通信
2017年08月号 「医師が勧める高齢者の健康法」
巷(ちまた)にはあまりに数多くの健康法があり、自分に適した健康法をどのように探し出せばよいのだろうかと悩んでいらっしゃる方もおられることでしょう。先だって大分合同新聞のコラムに取り上げられていましたが、杏林大学名誉教授の石川先生が提唱され、日本医師会が発表した「一読・十笑・百吸・千字・万歩」健康法。今回はこの健康法について説明したいと思います。
この健康法の優れているところは、普通に日常生活が送ることができる高齢者の方々に適していること、そして脳を活性化し、身体の抵抗力(免疫力)を高める効果が期待でき、介護予防につながること、の2点が挙げられます。
一読。これは読書を意味します。一日一回、好きな本でも新聞でも雑誌でもよいから、声を出してしっかり読むこと。これは認知機能の向上につながります。実際に私の外来では、もの忘れが気になる方に「絵本の朗読」を勧めておりまして、一定の成果が得られています。
十笑。文字通り笑うこと。笑いは身体の抵抗力・免疫力を高める効果があるとされます。また、笑うことはがんの予防にもなるという説もあります。最低でも一日十回は声に出して「わはは」と笑いたいものですね。
百吸。これは深呼吸。呼吸筋・腹筋を鍛えればたんが出やすくなり肺炎の予防になりますし、また深呼吸によって自律神経のバランスが整い、ストレス解消や体調の改善につながることも期待できそうです。十回の深呼吸をセットにしてこれを一日十回。これで百回深呼吸したことになります。
千字。これは字を書くこと。面倒くさがらずに声に出してていねいに文字を書く、これは確かに認知機能の維持・向上に役立つと思います。目を使う、耳を使う、手を使う、口を使う。このようにたくさんの身体の要素を用いた習慣は脳の働きを活性化させるものと考えます。小説をノートに写したり、日記を書いたり、時には辞書を活用して毎日何かを書いてみましょう。目安として、新聞のコラムを2回続けて書けば千字を超えるそうです。
万歩。これは歩くことですね。毎日しっかり歩くことでカロリー消費ができ肥満防止、足の筋力やバランス能力を向上させて転倒による骨折を防止、腸の働きが活性化されて便秘の予防のほか、歩行には記憶力向上、気分転換(ストレス発散)などの効果も期待できます。ただし、定期的に病院にかかっている方は歩行の程度について主治医に相談して下さい。心臓病や関節病で通院中の方は、時に歩行制限がなされることがあります。できることからムリなく続けていくことが大事ですね。 ( 文・神経内科 則行 英樹)