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神経内科通信

2023年12月号 気象病

  私は若い頃から片頭痛持ちなのですが、頭痛は不思議と季節の変わり目の天気が崩れる前にやってきます。症状と気候との関連は以前から感じていました。低気圧が近づくと耳鳴りやめまいが悪化する方、寒暖の差で不眠やだるさを訴える方がいらっしゃいます。以前は気のせいだと考えられていた症状も、最近では医学的観点から検証が行われつつあります。気象の変化で引き起こされる体や気分の不調は(正確な病名ではないのですが)「気象病」と呼ばれています。

 

 くわしく調べてみますと、気象病は気圧・寒暖差・湿度の3つの要因が短期間で変化するときに起こりやすいそうです。まずは気圧。日常的に意識することはないのですが、私たちの体には常に空気から14トン前後の圧力がかかっており、体の中から同じ力で押し返しています。ですから、気圧が変化して圧力バランスが崩れますと体に大きなストレスとなるわけです。参考までに海外の研究で、一日の中で気圧が10ヘクトパスカル以上低下すると、脳内の血管のコブが破裂しやすいことが判明しています。次に寒暖差。私たちは自律神経の働きで、寒い時も暑い時も体温を一定に保つことができています。ですから、気温差が激しいと自律神経が過剰に働いて体温調節に大きなエネルギーを要してしまい、その結果、疲れがたまりやすくなります。(7℃以上の気温差で自律神経の調節機能が乱れやすいといわれます。)また、前日との気温差が10℃以上ありますと、脳の血管が詰まる脳こうそくになりやすいことが知られていて、気温と気圧が同時に低下すると心臓の血管が詰まる心筋こうそくになりやすいとの報告もありました。最後に湿度。湿度は高い状態で体に影響が起こります。湿度が高いと汗が蒸発しづらくなり、身体に熱がこもって自律神経にストレスとなるからです。


 気象病でみられる代表的な症状には頭痛があります。他には全身のだるさ、肩こり、めまい、動悸(どうき)、低血圧などがあります。また時には気分の落ち込みもあるようです。せたがや内科クリニックの久手堅先生によりますと、気象病になりやすい方の特徴として、日頃から自律神経バランスの悪い体質(自律神経失調体質)の方が多いとのことです。自律神経は神経の束である脊髄(せきずい)に沿って体をタテに走行しています。ですから、首・肩・背中の筋肉が過剰に緊張したり、姿勢が悪かったりしますと脊髄を保護する背骨が曲がったり、歪(ゆが)んでしまい、その結果、気象病になりやすくなるのだそうです。


 これから本格的に寒い季節を迎えます。室内(特にお風呂の脱衣所)に温度計を置いて体を冷やさない工夫をし、天気予報で気温予想や低気圧の接近を把握することも病気の予防には大切になりそうですね。 

( 文・神経内科 則行 英樹 )

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