神経内科通信
2024年4月号 不眠に対する生活指導
「くすりが効きやすいからだを自分の努力で作っていただく」、これは外来診療を行う上での私のモットーです。特に生活習慣に起因する病気については、くすりを服用することだけが大事なのではなく、生活習慣そのものを変えていく必要があると私は考えています。実はこのことは不眠症でも当てはまります。
かゆみや痛みで眠れない、うつ気分やストレスで眠れない、というように眠れない原因がハッキリしているケースは除きます。「眠れないから睡眠薬を服用する」、これは正しいことを言っているように聞こえますが、実は必ずしもそうではありません。治療を始める前に安眠のために必要な生活習慣を知るべきです。
① 昼寝は30分以内に。・・・長時間の昼寝は夜の睡眠のリズムを崩します。
② 寝る前に水分を取り過ぎない。・・・夜間に尿意を催し、目を覚まします。
夜遅くにアルコールを飲むと夜中に目を覚ます原因となり、またカフェイン
(コーヒー、紅茶、日本茶など)はそれ自体に目を覚ます作用があります。
③ 毎朝、同じ時間におきる。・・・さらに言えば、起きたらすぐ日の光を浴びるのが良いそうです。これは脳の体内時計をリセットするためです。ついでに日中も積極的に日に当たること。これにより、起きる・寝るのメリハリがつきます。(夜に脳から出る睡眠物質の量が増えるとの報告があります。)
④ 毎朝、同じ時間にご飯を食べる。・・・毎日同じ時間にご飯を食べることにより、内臓の体内時計がリセットされます。からだのリズム作りですね。
⑤ 寝る前は強い光に当たらない。・・・特にスマートフォン、パソコンの光は脳に刺激を与えるので避けてください。薄暗い部屋のほうが良いかも。
⑥ 布団の中で眠気を待たない。・・・ここを間違えている方が多いです。眠気がさしてから布団に入ってください。睡眠薬を服用した際も同様です。
⑦ 睡眠時間は気にしない。・・・十分な睡眠時間は人それぞれです。基本的に日中に異常な眠気さえなければ睡眠は足りていると考えてよいと思います。
⑧ リラックスできる環境を作る。・・・イライラやドキドキしている時はまず眠れません。薄暗い部屋で静かな音楽を聴く、アロマ(香り)で落ち着く、深呼吸をする、など、自律神経を落ち着ける習慣も安眠には大切です。
⑨ 日中、からだを動かす習慣を持つ。・・・昼間に活動的な生活を送りますと、自律神経のメリハリがつきやすくなるそうです。特に夕方に軽い運動を。
⑩ 入浴は就寝の2時間前が目安。・・・寝る直前の入浴は寝つきを悪くしてしまい、早い時間の入浴は安眠にまったく関係しないとの報告がありました。
現在、睡眠薬を服用されている方、ぜひ実践を!
( 文・神経内科 則行 英樹 )