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神経内科通信

2017年09月号 「効果的な熱中症予防について」

効果的な熱中症予防について
 時期遅れの話題で申し訳ないのですが、ある医学雑誌に興味深い記事を見つけましたのでご紹介いたします。それは帝京大学救急医学の三宅教授へのインタビュー記事なのですが、先生が熱中症に対する予防指導の留意点を教えてくださっています。以下、記事の内容を要約させていただきます。
単純に「水を飲め」「塩を取れ」は無責任?
 熱中症予防でよく耳にするアドバイスが、「水分をこまめに補給せよ」ということです。たしかに脱水症を予防するために水分を摂ることは必要なのですが、この指示を守ろうとするあまり、逆に水を飲み過ぎる、あるいは塩を摂りすぎ るケースが時にある、とのことでした。三宅先生は安易な熱中症の予防指導は 行うべきではない、と強調なさっています。最近では性別や年齢に関係なく、 高血圧(各種心臓病を含む)やじん臓病、糖尿病の治療を行うケースが増えて います。熱中症予防の指導において、何よりもまず気をつけることは、このよ うな内臓疾患の有無をきちんと把握しておくことなのだそうです。心臓やじ ん臓の機能が低下している場合、水分や塩分の取り過ぎで心臓に負担がかかってしまい、血圧が上がり、同時に腎臓にも負担をかけることになります。また、糖尿病や高血糖傾向にある方にはスポーツドリンクの摂りすぎは危険。三宅先生のご意見では、水分・塩分摂取方法については、面倒でも脈拍(できれば血圧も同時に)・体重・汗のかき具合を考慮して決定することが望ましいそうです。たしかに水分の摂りすぎで心臓に負担がかかれば血圧は上昇しますし、逆に脱水となれば血圧は下がり脈拍が増えます。脈拍と体重の測定が参考になるのかも知れません。また、汗の量に応じて塩分補給、たとえば梅干しを口に含むなどの工夫をするのもよいようです。しかし自分に合った予防法なんて考えれば考えるほど難しいですよね。来年の夏にはぜひ、かかりつけ医に相談を。
熱中症予防の第一は「涼しい環境」づくり 
 水分をしっかり摂っていたとしても、熱中症になることはあります。水分・ 塩分摂取以外にも大切なポイントがあります。過去の実験では、室温が28度を超えなければ熱中症にはなりにくいことが証明されています。しかし、厳密に は室温のみではなく適度な湿度や風通しのよい環境も必要です。もちろん体力も。よく食べ、よく寝て体調を整えることも熱中症予防には欠かせないといえ るでしょう。熱中症が最もこわい時期は、梅雨明けからお盆の間です。温暖化 が叫ばれる昨今、気を抜かずに熱中症対策を心がけたいものです。有用な情報 があれば、この通信上でご報告いたします。       ( 文・神経内科 則行 英樹)
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