本文へ移動

神経内科通信

2022年4月号 転びやすさをチェックしましょう

 過去に複数回、この通信の記事にしたと記憶しておりますが、今回改めて転倒を予防することの重要性を強調しておきたいと思います。といいますのも、私の母が転倒(に伴なう骨折)を機に寝たきりとなった経緯があるからです。 コロナウイルス感染症の流行、加えて寒い冬ということで自宅に閉じこもりがちになり、体力が低下してしまった高齢の方が多いと聞き及びます。その状態で春を迎えて活動範囲が広がれば当然、転倒の機会が増えることも予想されます。転倒は決して他人事ではありません。まずは転倒の要因から始めます。 転倒を引き起こす要因は2つあり、身体要因と環境要因とが挙げられます。身体要因とは、簡単に言えば運動機能の低下のことを指します。筋力・バランス能力低下、目の状態不良、薬の副作用(血圧のくすり、安定剤)、注意力低下、痛みなどが影響して身のこなしが不良となり、転んでしまうものです。特に立ち上がり、方向転換、歩行時の足の突っかけで転ぶことが多いようです。次に環境要因ですが、これは居住環境や身に着けるものなどがきっかけとなり、転倒を引き起こすものを指します。具体的には、滑りやすい床、大したことのない段差、目の粗いじゅうたん、暗い照明、足元の動きやすい障害物、裾の長いズボン、脱げやすいスリッパなどが挙げられます。転倒を予防するには以上のような要因を把握することから始めなくてはいけません。 寝たきりの原因について、国は定期的に調査を実施しています。令和元年の発表によりますと、第1位は認知症( 24.3%)、第2位は脳卒中( 19.2%)、第3位は高齢による衰弱( 11.2%)、第4位は骨折・転倒( 12.0%)、第5位は関節疾患( 6.9%)、第6位は心疾患( 3.3%)となっていました。 なぜ、転倒(・骨折)が寝たきりの原因となるのか、それには理由があります。痛みや手術によりベッド上の生活が長引きますと、安静状態によりいっそう筋力が低下していきます。加えて認知機能や意欲も低下してしまい、自発的な体動が減ってさらに筋力を低下させます。また時には安静状態から肺炎や腎う炎などの感染症を併発し、さらに体力・筋力を落とすという悪循環に陥ります。無事に回復したとしても一度落ちた体力はそう簡単には元に戻らず、再び転倒をくり返してしまうというエピソードをよく耳にします。怖いことです。 やはり転倒は予防するに越したことはないと思います。まずはご自分の生活環境を見直すこと(居間での転倒が一番多いという統計があります)、そして何よりもご自分の身体要因を確認することが大切ではないでしょうか。裏面にチェックシートを載せます。ご活用ください。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )

TOPへ戻る