本文へ移動

神経内科通信

2022年6月号 誤嚥(ごえん)性肺炎の予防(その2)

 今回は日常生活で実施できる誤嚥性肺炎の予防法について説明いたします。
① 口の中を清潔に保つこと。・・・口の中の衛生管理(これを「口腔(こうくう)ケア」といいます。)は誤嚥性肺炎予防の大原則となります。といいますのも、過去の研究で、誤嚥性肺炎の患者さんのたんから検出されたバイ菌の大多数は、平素口の中に住んでいる菌と数多く一致したからです。口の中が不衛生になれば、それだけ誤嚥性肺炎を引き起こしやすい、と考えておきましょう。もちろん、虫歯や歯周病にも気をつける必要があります。さて、口の中を清潔に保つには何といっても食後の歯磨きが大切です。歯磨きは口の中をきれいにするだけではなく、歯ブラシでこする行為そのものが脳への刺激となるため、のみ込みやせき反応の改善につながるとの研究報告がありました。
② 食事の温度・・・のどには熱い食べものを感じる神経と、冷たい食べものを感じる神経とがあり、これらの神経を刺激するとのみ込み機能が改善することが知られています。よって、熱くして食べる食べ物は熱いままに、冷たくして食べる食べ物は冷たいままに食べることが大切になります。食べやすいように、飲み込みやすいようにと親切心から食べ物を常温にしてしまえば、時としてのみ込みの機能を落としてしまうことを考えなくてはいけません。
③ 香辛料を少々・・・唐辛子(とうがらし)のから味成分は、のみ込みの機能を高めます。食事の際、おかず一品にピリリと少々辛みを効かせるのもよいですね。他にミント(メンソール)を口にしたときの清涼感もよいそうです。
④ アロマセラピー・・・近年、においとのみ込み機能との関連性が明らかになりました。ブラックペッパーアロマを食事前に1分間嗅ぐことにより、のみ込みが改善したとのデータがあります。「むせにご縁なし」という製品があります。興味を持たれたら、一度お試しになってみてはいかがでしょうか。
⑤ 食後の姿勢・・・特にベッド上で生活をされている方の場合、食後2時間はベッドに横にならないことによって肺炎の軽症化が認められたそうです。
⑥ 便通のコントロール・・・便秘の改善とはすなわち、胃腸の活性化を意味します。便通を改善することにより、肺炎を予防できたデータがありました。
⑦ 栄養改善・・・一般的に栄養状態の悪い方は、さまざまな病気にかかりやすく、年齢を重ねるほど気がつかないうちに栄養状態が悪化していることがあります。(採血検査で栄養の評価ができます。)高齢者肺炎予防には栄養状態を常に意識しなければいけません。過去に栄養状態が改善して、のみ込み機能が良くなった方々を私は目の当たりにしました。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )
TOPへ戻る