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神経内科通信

2023年4月号 歩くことの大切さ

 
   
 「老化は足腰から始まる」とよく言われます。つまずいたり、よろけたり。これらは転倒の可能性をはらんでいて非常にキケンです。今回は「足腰の衰えを極力抑えるためには何が大切か」について考えます。さて、容易にコケない体を作るためには何が大切なのでしょう。結論から申しますと、下半身の筋力とバランス能力の2つです。日常、当たり前に行っている「歩く」という動作。これは筋肉の強化はもとより、バランス能力の向上にも役立つことをご存知ですか。歩くという動作を科学的に解析しますと、その動きは常に体を不安定な状態にさらしていることが判明したのです。すなわち、私たちは無意識にうまくバランスを取りながら歩いている、ということになるわけです。では、正しい歩き方とはどのようなものか、以下にいくつかポイントを挙げてみます。

ポイント①:歩行を行う際には姿勢に気をつける。
 歩く時の正しい姿勢についてはいろいろな説がありますが、その共通するところをまとめますと、「猫背にならないように背中は真っすぐ。顔は正面を向いて胸をはる。両肩は少々後ろに引き気味に、両腕はテンポよく前後に振る」となります。背中を真っすぐにする、これは老化によって弱まるといわれる体幹(たいかん)筋を鍛えることになり姿勢の矯正に役立ちますね。腰痛をお持ちの方には特に重要です。また、胸をはることによって胃や腸の圧迫が解除されて、さらには腹筋が働きやすくなり良好な呼吸が期待できます。

ポイント②:やや早めのペースで歩くこと。
 日常生活において特に歩行に困難を感じない方であれば、やや早めのペースで歩くことが推奨されます。理由としましては、健康増進に役立つ歩行をするためには、少しだけ心拍数を上げる必要があるとされるためです。ですから、のんびりとした歩き方では心臓の働きはあまり活性化されず、歩きの効果が弱まってしまうそうです。適切な心拍数については目安があります。「220から自分の年齢を引き、その7割前後の心拍数がよい」とされますが、これはさすがに難しいですね。「1分間に百歩以上」「息切れすることなく話せるが、歌うとちょっと息切れするレベル」。この基準のほうがわかりやすいですね。

ポイント③:1日トータルで三〇分のウォーキングを。
連続した三〇分でなくても、十五分を2回、あるいは一〇分を3回でもよいそうです。あらかじめウォーキングのコースを決めておくとよいですね。
 体調、年齢、治療中の病気によっては当然アドバイスが異なります。ご不明な点につきましては担当医にお尋ねください。 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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